第1回公認心理師試験(追加試験)過去問題11〜20

スポンサードリンク

問11  知的な遅れがなく、社会性やコミュニケーションを中心とした発達障害が疑われる児童に対して用いる検査として、最も適切なものを1つ選べ。

  1. ADHD-RS
  2. ADOS-2
  3. M-CHAT
  4. Vineland-II
  5. WISC-IV
解答

  1. 不注意、多動・衝動性のスクリーニング検査
  2. 自閉症スペクトラムについて診断・評価する際に用いられる検査。問題文より、対象児童に対する一定以上の見立てが完了していると考えられるため、スクリーニングではなく診断・評価を行うこちらが適切といえる。
  3. 自閉症スペクトラムに対するスクリーニング検査。こちらの検査は対象者として幼児を想定する。問題文より、評価・診断レベルの検査、児童を対象とする検査が必要と考えられるtめ、本問においては不適切。
  4. 広い観点から適応行動について捉える検査。求められる検査内容としては適切も考えられるものの、社会性やコミュニケーションをより焦点的に検査するADOS-2の方がより適切といえる。
  5. 知能について測定する検査。

問12  障害のある児童生徒への合理的配慮に該当する例として、最も適切なものを1つ選べ。

  1. 特別支援学校(視覚障害)の授業で点字を用いる。
  2. 特別支援教室において個別の取り出し指導を行う。
  3. 肢体不自由の児童生徒のために学校にエレベーターを設置する。
  4. 特別支援学校(聴覚障害)の授業で音声言語とともに手話も使う。
  5. 試験の際、書字障害の児童生徒にパーソナルコンピューターでの答案作成を許可する。
解答

ここでいう「合理的配慮」とは、文部科学省における障害のある児童生徒への「合理的配慮」の定義を指すといえる。この定義を基に選択肢について考えると

  1. 他生徒とは異なる機会の提供といえるため、「他の者と平等な権利を有するための配慮」とは視点が異なる配慮といえる。
  2. ①と同様の理由から不適切といえる。
  3. 個人に対する100万円以上の負担といえるため、一般的な教育機関における「過度の負担を課さないもの」には該当しないと考えられる。
  4. ①と同様の理由から不適切といえる。

合理的配慮を参照。

問13  心理アセスメントにあたっての基本的な情報の収集方法として、最も適切なものを1つ選べ。

  1. ワンウェイミラーの行動観察はアセスメントに必要である。
  2. 生育歴の聴取はアセスメントの基本となるため、初回面接で行う。
  3. 心理検査は一定の状況設定で行うため、得られた情報は客観的で信頼できる。
  4. アセスメントは面接でクライエントのニーズや来談経緯を聞くことから始まる。
  5. 家族関係把握のためのジェノグラム作成には動的家族画や合同家族画が役立つ。
解答

  1. ワンウェイミラー(いわゆるマジックミラー)を用いた行動観察はアセスメント手法として有用となる場合はあるものの、基本的な情報収集方法としては飛躍があるといえる。
  2. 必ずしも初回面接にて聴取するのではなく、面接を継続する中にて自然な流れとして聴取する方が望ましいといえる。
  3. クライエントの状態をはじめ、必ずしも最も望ましい状況設定の下にて実施できるとは限らない。また、完全に客観的な心理検査は存在しないため、「比較的客観的な手法」と理解する方が望ましいといえる。
  4. 動的家族画や合同家族画は、家族関係把握のためには有用と考えられるが、ジェノグラム作成へ直接的には関係しない。

問14  「関与しながらの観察」について、最も適切なものを1つ選べ。

  1. 関与も観察もともに観察者だけが行うことである。
  2. H. S. Sullivan が提唱した実験的観察法に関する概念である。
  3. 関与と観察は不可分のものであるため、観察者は中立的に参加しながら観察を行う。
  4. 観察者は現象に人為的な操作を加え、条件を統制したり関与したりしながら観察を行う。
  5. 観察者は自身が1つの道具としての性質を持っており、自らの存在の影響を排除できない。
解答

関与しながらの観察を参照。

  1. 参与観察では、観察者による関与だけでなく、フィールドの成員同士の関わりについても対象とする。
  2. 実験的観察法ではなく、参与観察法に関する概念である。
  3. 参与観察では、観察者もフィールドを構成する一であると捉える。
  4. 参与観察法ではなく、実験観察法の手法である。

問15 NEO-PI-R について、正しいものを1つ選べ。

  1. G. W. Allport が開発した。
  2. 人格の類型論が背景にある。
  3. 誠実性と調和性は後から加えられた。
  4. 敵意は外向性の下位次元に含まれる。
  5. 各人格次元にはそれぞれ2つの下位次元がある。
解答

  1. G. W. Allportではなく、P. T. Costa とP. R. McCraeにより開発された。
  2. 類型論ではなく、特性論が背景にある。
  3. 先行して外向性、開放性、神経症傾向の三種より構成され、後に誠実性と調和性が追加された。
  4. 協調性の下位次元に含まれる。
  5. 2つではなく、6つの下位次元がある。

問16  初回面接でのクライエントとの関わりにおいて必要な態度として、最も適切なものを1つ選べ。

  1. ラポール形成のために、早急な助言を控える。
  2. クライエントの主観的現実よりも客観的事実を重視する。
  3. クライエントの言葉に疑義を挟まず、そのままの言葉を返す。
  4. 主訴と状況を早く理解するために、できるだけ多くの情報を得る。
  5. クライエントが主訴とその状況を話しやすいよう、定型の質問を準備しておく。
解答

  1. 客観的事実とのずれについて検討する、ラポール形成のために主観的現実へ受容的に関わるなど、主観的現実についても十分に重視すべきといえる。
  2. 必ずしも共感的な応答を行うのではなく、クライエントの言葉について理解が困難な際などにおいては、詳細に説明を求める、主語を確認するなど、状況に応じて疑義を挟む必要がある場合もある。
  3. 初回面接にて過度な情報収集を行うことで、ラポールの形成が困難となる恐れがある。
  4. 定型の質問が有用に働く可能性はあるものの、非定型の質問についても、自由な連想の促進といった有用性があるといえる。したがって、適切な可能性はあるものの、1の方がより適切であるといえる。

問17  バーンアウトについて、正しいものを1つ選べ。

  1. バーンアウトの中核的な特徴は不安である。
  2. バーンアウトが最も多い職種は生産技術職である。
  3. バーンアウトを初めて提唱したのは C. Maslach である。
  4. バーンアウトした人は他者に対して無関心になりやすい。
  5. バーンアウトにおける情緒的消耗感とは自分への不信や疑惑が生じる状態を指す。
解答

  1. 中核的な症状は、情緒的消耗感、非人格化、個人的達成感の減退である。
  2. 医師、看護師、教師といった対人援助職にて比較的よく生じると言われている。
  3. C. Maslachではなく、H. J. Freudenbergerにより提唱された。
  4. 自分への不審や疑惑ではなく、仕事を通じて情緒的に力を出し尽くし消耗してしまった状態を指す。

問18  認知症の症状を中核症状とBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia〈BPSD〉とに分けた場合、中核症状に分類される内容として、正しいものを1つ選べ。

  1. 失禁
  2. 失行
  3. 徘徊
  4. 妄想
  5. 抑うつ
解答

中核症状とは、神経細胞の障害による直接的に生じる脳機能の症状を指す。BPSDは、中核症状に伴う精神面・行動面の症状を指す。選択肢の内、脳機能の症状としては②失行(複雑な作業について、身体的機能には問題が見られないにも関わらず必要な動作を行うことが出来ないこと)のみが当てはまる。

詳しくは、BPSDを参照。

問19  マルトリートメント(不適切な養育)について、最も適切なものを1つ選べ。

  1. 貧困との関連は乏しい。
  2. 初めに養育者に反省を促す。
  3. 子どもの脳の器質的問題は発生しない。
  4. 養育者自身の自尊感情とは関係がない。
  5. 多角的な視点でアセスメントする必要がある。
解答

  1. 例えば、貧困に伴い親から子どもへ適切な対応を行う精神的な余裕が剥奪される事が懸念が考えられる。また、健康保険や医療費の未払いなどにより、適切な治療を受けさせられないといった身体健康も挙げられる。
  2. 初めから反省を促すのではなく、養育者側への理解、マルトリートメントへと至った原因や過程についての理解に努める方が望ましいといえる。
  3. 例えば、身体的虐待を受けることで、感情を司る前頭前野の萎縮が見られるといった報告がある。
  4. 例えば、養育者自身の自尊感情が低減することで不穏感情が高まり、反動として力の弱い家族への暴力に至る可能性などが考えられる。

問20 非行について、正しいものを1つ選べ。

  1. 校内暴力は中学校と高等学校で増加傾向にある。
  2. 非行少年とは触法少年、虞犯少年及び不良行為少年の3つをいう。
  3. 少年鑑別所は非行に関する親や学校からの相談や非行防止への援助の業務を担う。
  4. 児童相談所は家庭裁判所から送致を受けた少年を児童自立支援施設に措置することはできない。
  5. 非行少年は家庭裁判所での審判を受け、保護観察又は少年院送致のいずれかの保護処分を受ける。
解答

  1. 本問が使われた2018年次点、文部科学省の報告によると、中学校、高等学校ともに、毎年の暴力行為発生件数は減少傾向にある。
  2. 不良行為の少年は該当しない。一方で、触法少年、虞犯少年とともに、犯罪少年が該当する。
  3. 児童福祉法に従う自治体の送致決定より、児童相談所は家庭裁判所から送致を受けた少年を児童自立支援施設に措置することが可能。
  4. 保護観察、少年院送致に加え、児童自立支援施設または児童養護施設への送致が保護処分の候補として挙げられる。

    【参考】
    ・文部科学省 (2018). 「平成29年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について

    ・少年法第3条より
    「次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。
    一 罪を犯した少年
    二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
    三 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
    イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
    ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
    ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
    ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。」

    ・少年鑑別所法第131条より
    「少年鑑別所の長は、地域社会における非行及び犯罪の防止に寄与するため、非行及び犯罪に関する各般の問題について、少年、保護者その他の者からの相談のうち、専門的知識及び技術を必要とするものに応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うとともに、非行及び犯罪の防止に関する機関又は団体の求めに応じ、技術的助言その他の必要な援助を行うものとする。」

    ・児童福祉法第27条の2より
    「都道府県は、少年法第二十四条第一項又は第二十六条の四第一項の規定により同法第二十四条第一項第二号の保護処分の決定を受けた児童につき、当該決定に従つて児童自立支援施設に入所させる措置(保護者の下から通わせて行うものを除く。)又は児童養護施設に入所させる措置を採らなければならない。」

    ・少年法第24条より
    「家庭裁判所は、前条の場合を除いて、審判を開始した事件につき、決定をもつて、次に掲げる保護処分をしなければならない。ただし、決定の時に十四歳に満たない少年に係る事件については、特に必要と認める場合に限り、第三号の保護処分をすることができる。
    一 保護観察所の保護観察に付すること。
    二 児童自立支援施設又は児童養護施設に送致すること。
    三 少年院に送致すること。」

スポンサードリンク

シェアお願いします

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください