統合失調症

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歴史

  • 1852年…ベネディクト・モレノによって統合失調症が初めて記述される。
  • 1871年…エヴァルト・ヘッカーが「破瓜病」を著す。
  • 1874年…カール・カールバウムが「緊張病」を著す。
  • 1899年…ミエール・クレペリンが「早発性痴呆」を著し、破瓜病、緊張病に「妄想病」を↓   加える(クレペリンが「早発性痴呆」と名づけたことが起源である)。
  • 1911年…オイゲン・ブロイラーが病気の本性を観念連合の弛緩にあるとし、早発性痴呆を「精神分裂病」と改名した。基本症状として、連合障害、情動障害、自閉、両価性、分裂病性痴呆を挙げた。
  • 1952年…ジャン・ドレーとピエール・ドニカーがクロルプロマジンの統合失調症に対する↓   治療効果を初めて評価し、精神病に対する精神科薬物療法の時代が幕を開けた。
  • 1957年…パウル・ヤンセンがプロルプロマジンより優れた抗精神病薬ハロペリドールを開↓   発する。
  • 1987年…非定型抗精神病薬リスペリドンが開発される。
  • 1990年…中安信夫が初期統合失調症の概念を提唱する。
  • 2002年8月…統合失調症に改名する。

*他の概念

  • シュナイダー(自我境界の喪失)
  • サリバン(対人関係の障害)
  • Minkowski(現実と生ける接触の喪失)
  • Blankenbueg(自明性の喪失)

疫学

  • 青年期を好発年齢とし、一般人口の0.7%程度(120人に1人)の発生頻度をもつ(男性は18~25歳、女性は25~30歳半ば)。
  • 一般に破瓜型(解体型)に比べて妄想型は発症年齢が遅いとされ、30-40代での発病が多い。
  • 統合失調症をもつ人の生物学的第一度親族は、一般人口と比べて統合失調症になる危険が約10倍高い。

原因

  • ドーパミン仮説

中脳辺縁系におけるドーパミンの過剰が、幻覚や妄想といった陽性症状に関与している。

  • グルタミン酸仮説
  • 遺伝的な欠陥
  • 発達障害仮説
  • two-hit theory(胎生期と思春期に2回にわたる脳へのダメージ)
  • 心因説(主にダブルバインド)

症状

陽性症状

思考の障害(思考過程の障害と思考内容の障害に二分される)

①思考過程の障害

・連合弛緩(他人の質問に対して的外れな答えを返す、話がまとまらない)

②思考内容の障害

  • 妄想気分(周囲が何か変で、よそよそしく感じられる)
  • 妄想知覚
  • 被害妄想(他人が自分を害しようと考えている)
  • 関係妄想(周囲の出来事を全て自分に関係づけて考える)
  • 注察妄想(常に誰かに見張られていると感じる)
  • 追跡妄想(誰かに追われていると感じる)
  • 心気妄想(重い病気にかかったと思い込む)
  • 誇大妄想(自分は偉大などと思い込む)
  • 宗教妄想(自分は神だと思い込む)
  • 嫉妬妄想(恋人などが不貞を行っていると思い込む)
  • 恋愛妄想(異性に愛されていると思い込む)
  • 被毒妄想(飲食物に毒が入っていると思い込む)
  • 血統妄想(自分は天皇の隠し子だと思い込む)
  • 家族否認妄想(自分の家族は本当の家族ではないと思い込む)

*程度が軽く、患者自身もその非合理性にわずかに気付いているものを“~念慮”という。

知覚の障害

幻聴が多くみられる一方で、幻視は極めて稀である。

・幻聴、幻視、幻嗅、幻味、体感幻覚(宇宙人が交信してくるなど)

自我意識の障害

自己と他者を区別することが困難になる。

  • 思考吹入(他人の考えが入ってくる)
  • 思考奪取(自分の考えが他人に奪われる)
  • 思考伝播(自分の考えが他人に伝わる)
  • 思考察知(自分の考えが他人に知られている)
  • 思考反響(頭で考えたことが声になる)

意思・欲望の障害

  • 興奮
  • 昏迷(外からの刺激や要求にも反応しない状態)
  • 拒食

陰性症状

感情の障害

  • 感情鈍麻(感情が平板化し、外部に現れない)
  • 疎通性の障害(他者との心の通じ合いがない)

思考の障害

  • 常同的思考
  • 抽象的思考の障害

意思・欲望の障害

  • 自発性の低下
  • 意欲低下
  • 無関心

認知機能障害

・現実検討力の低下

感情の障害

  • 抑うつ
  • 不安
  • 独言(空笑)

*他の症状として、作為体験(操られている感じ)、緊張病性興奮(急に興奮してなぐりかかってくる)、言語新作(妙な言葉を編み出す)、ことばのサラダ(断片的な言葉をただ連ねる)がある。

経過

①神経衰弱様状態

  • 主観的には抑うつ、思考・記憶・注意集中の低下、不眠、易疲労感、倦怠感、心気症、離人症、強迫症状を訴える。
  • 客観的には意欲の低下、身近の出来事に対して興味が薄れる、こもりがちになる。

*プレコックス感…統合失調症患者に相対した時、観察者が抱く“一種の言いようのない特有な感情”のこと。

②初期症状(急性期症状)幻覚や妄想などの陽性症状がみられる。

③中間期

④慢性化

治療

薬物療法

以前までは、抗精神病薬(陽性症状を中心とした症状の軽減に有効)が主流であったが、現在では副作用が少なく、陰性症状にも有効性が高い非定型抗精神病薬が使用されている。

<非定型抗精神病薬の6種類>

  • リスペリドン
  • ペロスピロン
  • オランザピン(稀に高血糖、糖尿病を誘発)
  • クエチアピン(稀に高血糖、糖尿病を誘発)
  • アリピプラゾール
  • ブロナンセリン

<抗精神病薬の副作用>

  • ドーパミン拮抗作用によるパーキンソン症候群
  • 錐体外路症状
  • アカシジア
  • 便秘
  • 口渇
  • 眼のかすみ
  • 眠気      etc

*投薬により人格が荒廃に至らず、デイケアでの援助により社会生活を送れることもできる。

心理教育

薬物療法によって陽性症状が軽減しても、自らが精神疾患に罹患しているという自覚を持つことは容易ではなく、病識の不足は服薬の自己中断から再発率を上昇させることが知られている。病識を持つことを援助し、疾患との折り合いの付け方を学び、治療意欲を向上させる。本人だけでなく、家族への心理教育なども必要である。

ソーシャル・スキル・トレーニング

自立して生活できる能力を身につける。

作業療法

絵画、折り紙、手芸、園芸、陶芸、スポーツなどの作業活動を主体として行う治療。非言語的な交流がストレス解消につながったり自己価値観を高めたりする効果がある。病棟活動やデイケアプログラムの一環として行われることが多い。急性期では、作業活動を通して幻覚・妄想などを抑え、現実世界で過ごす時間を増やしたり、生活リズムを整えたりすることを目標とする。そのためには患者が集中できるような作業活動を見つけて適用することが必要となる。慢性期では、退院を目標とする。そのためには服薬管理や生活リズム管理など、自分のことは自分でおこない自己管理ができるようになり、作業能力と体力も向上することが必要となる。慢性期での作業療法では患者のペースで行なえる作業活動を徐々に増やしていくよう心がける。

心理療法

薬物療法と並行して、疾患の心理的な受容、疾患や治療に伴い経験した喪失体験の受容などを援助するために個人精神療法を行うこともある。査定に関しては、ロールシャッハ・テスト、バウム・テスト、MMPI、WAISなどのテストバッテリーを組むことが大切であるが、侵襲性の高い心理療法は禁止。

統合失調症(DSMー5)

A.以下のうち2つ(またはそれ以上)、おのおのが1カ月間(または治療が成功した際はより短い期間)ほとんどいつも存在する。これらのうち少なくとも1つは(1)か(2)か(3)である。

(1)妄想
(2)幻覚
(3)まとまりのない発語(例:頻繁な脱線または滅裂)
(4)ひどくまとまりのない、または緊張病性の行動
(5)陰性症状(すなわち感情の平板化、意欲欠如)

B.障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能のレベルが病前に獲得していた水準より著しく低下している(または、小児期や青年期の発症の場合、期待される対人的、学業的、職業的水準にまで達しない)。

C.障害の持続的な徴候が少なくとも6カ月間存在する。この6カ月の期間には、基準Aを満たす各症状(すなわち、活動期の症状)は少なくとも1カ月(または、治療が成功した場合はより短い期間)存在しなければならないが、前駆期または残遺期の症状の存在する期間を含んでもよい。これらの前駆期または残遺期の期間では、障害の徴候は陰性症状のみか、もしくは基準Aにあげられた症状の2つまたはそれ以上が弱められた形(例i奇妙な信念、異常な知覚体験)で表されることがある。

D.統合失調感情障害と「抑うつ障害または双極性障害、精神病性の特徴を伴う」が以下のいずれかの理由で除外されていること。
(1)活動期の症状と同時に、抑うつエピソード、躁病エピソードが発症していない。
(2)活動期の症状中に気分エピソードが発症していた場合、その持続期間の合計は、疾病の活動期および残遺期の持続期間の合計の半分に満たない。

E.その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。

F.自閉スペクトラム症や小児期発症のコミュニケーシ∃ン症の病歴があれば、統合失調症の追加診断は、顕著な幻覚や妄想が、その他の統合失調症の診断の必須症状に加え、少なくとも1カ月(または、治療が成功した場合はより短い)存在する場合にのみ与えられる。

DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル

診断基準:ICD-10

  1. 考想化声、考想吹入あるいは考想奪取、考想伝播。
  2. 支配される、影響される、あるいは抵抗できないという妄想で、身体や四肢の運動や特定の思考、行動あるいは感覚に関するものである。それに加えて妄想知覚。
  3. 患者の行動を実況解説する幻声、患者のことを話し合う幻声。あるいは身体のある部分から聞こえる他のタイプの幻声。
  4. 宗教的あるいは政治的身分、超人的力や能力などの文化的にそぐわないまったくありえない他のタイプの持続的妄想(たとえば、天候をコントロールできるとか宇宙人と交信しているなど)。
  5. どのような種類であれ、持続的な幻覚が、感情症状ではない浮動性や部分的妄想あるいは持続的な支配観念を伴って生じる、あるいは数週間か数カ月間毎日継続的に生じる。
  6. 思考の流れに途絶や挿入があるために、まとまりのない、あるいは関連性を欠いた話し方になり、言語新作がみられたりする。
  7. 興奮、常同姿勢あるいはろう屈症、拒絶症、緘黙、および昏迷などの緊張病性行動。
  8. 著しい無気力、会話の貧困、および情動的反応の鈍麻あるいは状況へのそぐわなさなど、通常社会的引きこもりや社会的能力低下をもたらす「陰性症状」。それは抑うつや向精神薬によるものでないこと。
  9. 関心喪失、目的欠如、無為、自己没頭、および社会的引きこもりとしてあらわれる、個人的行動のいくつかの側面の質が全般的なに、著明で一貫して変化する。

統合失調症の診断のために通常必要とされるのは、上記の(a)から(d)のいずれか1つに属する症状のうち少なくとも1つの明らかな症状(十分に明らかでなければ、ふつう2つ以上)。あるいは(e)から(h)の少なくとも2つの症状が、1カ月以上、ほとんどいつも明らかに存在していなければならない。

第5回公認心理師試験に出題

問141  17 歳の男子A、高校2年生。Aは、監視されているという恐怖のため登校できなくなり、母親Bに連れられて高校のカウンセリングルームの公認心理師Cのもとへ相談に訪れた。Aは、 1 か月ほど前から、外出すると自分が見張られており、家の中にいても外から監視されていると感じ、怖くてたまらなくなった。「見張られていること、監視されていることは間違いない」、「自分が考えていることが他者に伝わってしまう」とAは言う。Aに身体疾患はなく、薬物の乱用経験もない。 Bは、「カウンセリングによってAの状態を良くしてほしい」とCに伝えた。この時点でのCによる対応として、最も適切なものを1つ選べ。

  1. A に対して支持的心理療法を開始する。
  2. しばらく様子を見ることを A と B に伝える。
  3. A に対して集団での SST への参加を勧める。
  4. 薬物療法が有効である可能性を A と B に説明する。
  5. B の意向を踏まえて、A に対してカウンセリングを開始する。
解答

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