文部科学省が不登校に関する通知を更新 令和元年10月25日

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不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日

以下全文ですが、大事なところは赤字にしています。

1  不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方

(1)支援の視点
不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。また,児童生徒によっては,不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で,学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。

(2)学校教育の意義・役割
特に義務教育段階の学校は,各個人の有する能力を伸ばしつつ,社会において自立的に生きる基礎を養うとともに,国家・社会の形成者として必要とされる基本的な資質を培うことを目的としており,その役割は極めて大きいことから,学校教育の一層の充実を図るための取組が重要であること。また,不登校児童生徒への支援については児童生徒が不登校となった要因を的確に把握し,学校関係者や家庭,必要に応じて関係機関が情報共有し,組織的・計画的な,個々の児童生徒に応じたきめ細やかな支援策を策定することや,社会的自立へ向けて進路の選択肢を広げる支援をすることが重要であること。さらに,既存の学校教育になじめない児童生徒については,学校としてどのように受け入れていくかを検討し,なじめない要因の解消に努める必要があること。
また,児童生徒の才能や能力に応じて,それぞれの可能性を伸ばせるよう,本人の希望を尊重した上で,場合によっては,教育支援センターや不登校特例校,ICTを活用した学習支援,フリースクール,中学校夜間学級(以下,「夜間中学」という。)での受入れなど,様々な関係機関等を活用し社会的自立への支援を行うこと。
その際,フリースクールなどの民間施設やNPO等と積極的に連携し,相互に協力・補完することの意義は大きいこと。

(3)不登校の理由に応じた働き掛けや関わりの重要性
不登校児童生徒が,主体的に社会的自立や学校復帰に向かうよう,児童生徒自身を見守りつつ,不登校のきっかけや継続理由に応じて,その環境づくりのために適切な支援や働き掛けを行う必要があること。

(4)家庭への支援
家庭教育は全ての教育の出発点であり,不登校児童生徒の保護者の個々の状況に応じた働き掛けを行うことが重要であること。また,不登校の要因・背景によっては,福祉や医療機関等と連携し,家庭の状況を正確に把握した上で適切な支援や働き掛けを行う必要があるため,家庭と学校,関係機関の連携を図ることが不可欠であること。その際,保護者と課題意識を共有して一緒に取り組むという信頼関係をつくることや,訪問型支援による保護者への支援等,保護者が気軽に相談できる体制を整えることが重要であること。

2  学校等の取組の充実

(1)「児童生徒理解・支援シート」を活用した組織的・計画的支援
不登校児童生徒への効果的な支援については,学校及び教育支援センターなどの関係機関を中心として組織的・計画的に実施することが重要であり,また,個々の児童生徒ごとに不登校になったきっかけや継続理由を的確に把握し,その児童生徒に合った支援策を策定することが重要であること。その際,学級担任,養護教諭,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー等の学校関係者が中心となり,児童生徒や保護者と話し合うなどして,「児童生徒理解・支援シート(参考様式)」(別添1)(以下「シート」という。)を作成することが望ましいこと。これらの情報は関係者間で共有されて初めて支援の効果が期待できるものであり,必要に応じて,教育支援センター,医療機関,児童相談所等,関係者間での情報共有,小・中・高等学校間,転校先等との引継ぎが有効であるとともに,支援の進捗状況に応じて,定期的にシートの内容を見直すことが必要であること。また,校務効率化の観点からシートの作成に係る業務を効率化するとともに,引継ぎに当たって個人情報の取扱いに十分留意することが重要であること。
なお,シートの作成及び活用に当たっては,「児童生徒理解・支援シートの作成と活用について」(別添2)を参照すること。

(2)不登校が生じないような学校づくり
1.魅力あるよりよい学校づくり
児童生徒が不登校になってからの事後的な取組に先立ち,児童生徒が不登校にならない,魅力ある学校づくりを目指すことが重要であること。
2.いじめ,暴力行為等問題行動を許さない学校づくり
いじめや暴力行為を許さない学校づくり,問題行動へのき然とした対応が大切であること。また教職員による体罰や暴言等,不適切な言動や指導は許されず,教職員の不適切な言動や指導が不登校の原因となっている場合は,懲戒処分も含めた厳正な対応が必要であること。
3.児童生徒の学習状況等に応じた指導・配慮の実施
学業のつまずきから学校へ通うことが苦痛になる等,学業の不振が不登校のきっかけの一つとなっていることから,児童生徒が学習内容を確実に身に付けることができるよう,指導方法や指導体制を工夫改善し,個に応じた指導の充実を図ることが望まれること。
4.保護者・地域住民等の連携・協働体制の構築
社会総掛かりで児童生徒を育んでいくため,学校,家庭及び地域等との連携・協働体制を構築することが重要であること。
5.将来の社会的自立に向けた生活習慣づくり
児童生徒が将来の社会的自立に向けて,主体的に生活をコントロールする力を身に付けることができるよう,学校や地域における取組を推進することが重要であること。

(3)不登校児童生徒に対する効果的な支援の充実
1.不登校に対する学校の基本姿勢
校長のリーダーシップの下,教員だけでなく,様々な専門スタッフと連携協力し,組織的な支援体制を整えることが必要であること。また,不登校児童生徒に対する適切な対応のために,各学校において中心的かつコーディネーター的な役割を果たす教員を明確に位置付けることが必要であること。
2.早期支援の重要性
不登校児童生徒の支援においては,予兆への対応を含めた初期段階からの組織的・計画的な支援が必要であること。
3.効果的な支援に不可欠なアセスメント
不登校の要因や背景を的確に把握するため,学級担任の視点のみならず,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカー等によるアセスメント(見立て)が有効であること。また,アセスメントにより策定された支援計画を実施するに当たっては,学校,保護者及び関係機関等で支援計画を共有し,組織的・計画的な支援を行うことが重要であること。
4.スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとの連携協力
学校においては,相談支援体制の両輪である,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーを効果的に活用し,学校全体の教育力の向上を図ることが重要であること。
5.家庭訪問を通じた児童生徒への積極的支援や家庭への適切な働き掛け
学校は,プライバシーに配慮しつつ,定期的に家庭訪問を実施して,児童生徒の理解に努める必要があること。また,家庭訪問を行う際は,常にその意図・目的,方法及び成果を検証し適切な家庭訪問を行う必要があること。
なお,家庭訪問や電話連絡を繰り返しても児童生徒の安否が確認できない等の場合は,直ちに市町村又は児童相談所への通告を行うほか,警察等に情報提供を行うなど,適切な対処が必要であること。
6.不登校児童生徒の学習状況の把握と学習の評価の工夫
     不登校児童生徒が教育支援センターや民間施設等の学校外の施設において指導を受けている場合には,当該児童生徒が在籍する学校がその学習の状況等について把握することは,学習支援や進路指導を行う上で重要であること。学校が把握した当該学習の計画や内容がその学校の教育課程に照らし適切と判断される場合には,当該学習の評価を適切に行い指導要録に記入したり,また,評価の結果を通知表その他の方法により,児童生徒や保護者,当該施設に積極的に伝えたりすることは,児童生徒の学習意欲に応え,自立を支援する上で意義が大きいこと。
7.不登校児童生徒の登校に当たっての受入体制
不登校児童生徒が登校してきた場合は,温かい雰囲気で迎え入れられるよう配慮するとともに,保健室,相談室及び学校図書館等を活用しつつ,徐々に学校生活への適応を図っていけるような指導上の工夫が重要であること。
8.児童生徒の立場に立った柔軟な学級替えや転校等の対応
いじめが原因で不登校となっている場合等には,いじめを絶対に許さないき然とした対応をとることがまずもって大切であること。また,いじめられている児童生徒の緊急避難としての欠席が弾力的に認められてもよく,そのような場合には,その後の学習に支障がないよう配慮が求められること。そのほか,いじめられた児童生徒又はその保護者が希望する場合には,柔軟に学級替えや転校の措置を活用することが考えられること。
また,教員による体罰や暴言等,不適切な言動や指導が不登校の原因となっている場合は,不適切な言動や指導をめぐる問題の解決に真剣に取り組むとともに,保護者等の意向を踏まえ,十分な教育的配慮の上で学級替えを柔軟に認めるとともに,転校の相談に応じることが望まれること。
保護者等から学習の遅れに対する不安により,進級時の補充指導や進級や卒業の留保に関する要望がある場合には,補充指導等の実施に関して柔軟に対応するとともに,校長の責任において進級や卒業を留保するなどの措置をとるなど,適切に対応する必要があること。また,欠席日数が長期にわたる不登校児童生徒の進級や卒業に当たっては,あらかじめ保護者等の意向を確認するなどの配慮が重要であること。

(4)不登校児童生徒に対する多様な教育機会の確保
不登校児童生徒の一人一人の状況に応じて,教育支援センター,不登校特例校,フリースクールなどの民間施設,ICTを活用した学習支援など,多様な教育機会を確保する必要があること。また,夜間中学において,本人の希望を尊重した上での受入れも可能であること。
義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において,指導・助言等を受けている場合の指導要録上の出席扱いについては,別記1によるものとし,高等学校における不登校生徒が学校外の公的機関や民間施設において,指導・助言等を受けている場合の指導要録上の出席扱いについては,「高等学校における不登校生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の対応について」(平成21年3月12日付け文部科学省初等中等教育局長通知)によるものとすること。また,義務教育段階の不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出席扱いについては,別記2によるものとすること。その際,不登校児童生徒の懸命の努力を学校として適切に判断すること。
なお,不登校児童生徒が民間施設において相談・指導を受ける際には,「民間施設についてのガイドライン(試案)」(別添3)を参考として,判断を行う際の何らかの目安を設けておくことが望ましいこと。
また,体験活動においては,児童生徒の積極的態度の醸成や自己肯定感の向上等が期待されることから,青少年教育施設等の体験活動プログラムを積極的に活用することが有効であること。

(5)中学校等卒業後の支援
1.高等学校入学者選抜等の改善
高等学校入学者選抜について多様化が進む中,高等学校で学ぶ意欲や能力を有する不登校生徒について,これを適切に評価することが望まれること。
また,国の実施する中学校卒業程度認定試験の活用について,やむを得ない事情により不登校となっている生徒が在学中に受験できるよう,不登校生徒や保護者に対して適切な情報提供を行うことが重要であること。
2.高等学校等における長期欠席・中途退学への取組の充実
就労支援や教育的ニーズを踏まえた特色ある高等学校づくり等も含め,様々な取組や工夫が行われることが重要であること。
3.中学校等卒業後の就学・就労や「ひきこもり」への支援
中学校時に不登校であり,中学校卒業後に進学も就労もしていない者,高等学校へ進学したものの学校に通えない者,中途退学した者等に対しては,多様な進学や職業訓練等の機会等について相談できる窓口や社会的自立を支援するための受皿が必要であること。また,関係行政機関等が連携したり,情報提供を行うなど,社会とのつながりを絶やさないための適切な対応が必要であること。
4.改めて中学校等で学び直すことを希望する者への支援
不登校等によって実質的に義務教育を十分に受けられないまま中学校等を卒業した者のうち,改めて中学校等で学び直すことを希望する者については,「義務教育修了者が中学校夜間学級への再入学を希望した場合の対応に関する考え方について」(平成27年7月30日付け文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課長通知)に基づき,一定の要件の下,夜間中学での受入れを可能とすることが適当であることから,夜間中学が設置されている地域においては,卒業時に夜間中学の意義や入学要件等について生徒及び保護者に説明しておくことが考えられること。

3  教育委員会の取組の充実

(1)不登校や長期欠席の早期把握と取組
教育委員会においては,学校等の不登校への取組に関する意識を更に高めるとともに,学校が家庭や関係機関等と効果的に連携を図り,不登校児童生徒に対する早期の支援を図るための体制の確立を支援することが重要であること。

(2)学校等の取組を支援するための教育条件等の整備等
1.教員の資質向上
教育委員会における教員の採用・研修を通じた資質向上のための取組は不登校への適切な対応に資する重要な取組であり,初任者研修を始めとする教職経験に応じた研修,生徒指導・教育相談といった専門的な研修,管理職や生徒指導主事を対象とする研修などの体系化とプログラムの一層の充実を図り,不登校に関する知識や理解,児童生徒に対する理解,関連する分野の基礎的な知識などを身に付けさせていくことが必要であること。また,指導的な教員を対象にカウンセリングなどの専門的な能力の育成を図るとともに,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカー等の専門性と連動した学校教育への更なる理解を図るといった観点からの研修も重要であること。
2.きめ細やかな指導のための適切な人的措置
不登校が生じないための魅力ある学校づくり,「心の居場所」としての学校づくりを進めるためには,児童生徒一人一人に対してきめ細やかな指導が可能となるよう,適切な教員配置を行うことが必要であること。また,異校種間の人事交流や兼務などを進めていくことも重要であること。
不登校児童生徒が多く在籍する学校については,教員の加配等,効果的かつ計画的な人的配置に努める必要があること。そのためにも日頃より各学校の実情を把握し,また加配等の措置をした後も,この措置が効果的に活用されているか等の検証を十分に行うこと。
3.保健室,相談室や学校図書館等の整備
養護教諭の果たす役割の大きさに鑑み,養護教諭の複数配置や研修機会の充実,保健室,相談室及び学校図書館等の環境整備,情報通信機器の整備等が重要であること。
4.転校のための柔軟な措置
いじめや教員による不適切な言動や指導等が不登校の原因となっている場合には,市区町村教育委員会においては,児童生徒又は保護者等が希望する場合,学校と連携した適切な教育的配慮の下に,就学すべき学校の指定変更や区域外就学を認めるなどといった対応も重要であること。また,他の児童生徒を不登校に至らせるような深刻ないじめや暴力行為があった場合は,必要に応じて出席停止措置を講じるなど,き然とした対応の必要があること。
5.義務教育学校設置等による学校段階間の接続の改善
義務教育学校等において9年間を見通した生徒指導の充実等により不登校を生じさせない取組を推進することが重要であること。また,小中一貫教育を通じて蓄積される優れた不登校への取組事例を広く普及させることが必要であること。
6.アセスメント実施のための体制づくり
不登校の要因・背景が多様・複雑化していることから,初期の段階での適切なアセスメントを行うことが極めて重要であること。そのためには,児童生徒の状態によって,専門家の協力を得る必要があり,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの配置・派遣など学校をサポートしていく体制の検討が必要であること。

(3)教育支援センターの整備充実及び活用
1.教育支援センターを中核とした体制整備
今後,教育支援センターは通所希望者に対する支援だけでなく,これまでに蓄積された知見や技能を生かし,通所を希望しない者への訪問型支援,シートのコンサルテーションの担当など,不登校児童生徒への支援の中核となることが期待されること。
また,不登校児童生徒の無償の学習機会を確保し,不登校児童生徒への支援の中核的な役割を果たしていくため,未設置地域への教育支援センターの設置又はこれに代わる体制整備が望まれること。そのため,都道府県教育委員会は,域内の市区町村教育委員会と緊密な連携を図りつつ,未整備地域を解消して不登校児童生徒や保護者が利用しやすい環境づくりを進め,「教育支援センター整備指針(試案)」(別添4)を参考に,地域の実情に応じた指針を作成し必要な施策を講じていくことが求められること。
市区町村教育委員会においては,主体的に教育支援センターの整備充実を進めていくことが必要であり,教育支援センターの設置促進に当たっては,例えば,自治体が施設を設置し,民間の協力の下に運営する公民協営型の設置等も考えられること。もとより,市区町村教育委員会においても,「教育支援センター整備指針」を策定することも考えられること。その際には,教育支援センターの運営が不登校児童生徒及びその保護者等のニーズに沿ったものとなるよう留意すること。
なお,不登校児童生徒への支援の重要性に鑑み,私立学校等の児童生徒の場合でも,在籍校と連携の上,教育支援センターの利用を認めるなど柔軟な運用がなされることが望ましいこと。
2.教育支援センターを中核とした支援ネットワークの整備
教育委員会は,積極的に,福祉・保健・医療・労働部局等とのコーディネーターとしての役割を果たす必要があり,各学校が関係機関と連携しやすい体制を構築する必要があること。また,教育支援センター等が関係機関や民間施設等と連携し,不登校児童生徒やその保護者を支援するネットワークを整備することが必要であること。

(4)訪問型支援など保護者への支援の充実
教育委員会においては,保護者に対し,不登校のみならず子育てや家庭教育についての相談窓口を周知し,不登校への理解や不登校となった児童生徒への支援に関しての情報提供や相談対応を行うなど,保護者に寄り添った支援の充実が求められること。また,プライバシーに配慮しつつも,困難を抱えた家庭に対する訪問型支援を積極的に推進することが重要であること。

(5)民間施設との連携協力のための情報収集・提供等
不登校児童生徒への支援については,民間施設やNPO等においても様々な取組がなされており,学校,教育支援センター等の公的機関は,民間施設等の取組の自主性や成果を踏まえつつ,より積極的な連携を図っていくことが望ましいこと。そのために,教育委員会においては,日頃から積極的に情報交換や連携に努めること。

(別記1)義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて

1 趣旨
不登校児童生徒の中には,学校外の施設において相談・指導を受け,社会的な自立に向け懸命の努力を続けている者もおり,このような児童生徒の努力を学校として評価し支援するため,我が国の義務教育制度を前提としつつ,一定の要件を満たす場合に,これらの施設において相談・指導を受けた日数を指導要録上出席扱いとすることができることとする。

2 出席扱い等の要件
不登校児童生徒が学校外の施設において相談・指導を受けるとき,下記の要件を満たすとともに,当該施設における相談・指導が不登校児童生徒の社会的な自立を目指すものであり,かつ,不登校児童生徒が現在において登校を希望しているか否かにかかわらず,不登校児童生徒が自ら登校を希望した際に,円滑な学校復帰が可能となるよう個別指導等の適切な支援を実施していると評価できる場合,校長は指導要録上出席扱いとすることができる。

(1)保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること。

(2)当該施設は,教育委員会等が設置する教育支援センター等の公的機関とするが,公的機関での指導の機会が得られないあるいは公的機関に通うことが困難な場合で本人や保護者の希望もあり適切と判断される場合は,民間の相談・指導施設も考慮されてよいこと。 ただし,民間施設における相談・指導が個々の児童生徒にとって適切であるかどうかについては,校長が,設置者である教育委員会と十分な連携をとって判断するもの とすること。このため,学校及び教育委員会においては,「民間施設についてのガイド ライン」(別添3)を参考として,上記判断を行う際の何らかの目安を設けておくことが望ましいこと。

(3)当該施設に通所又は入所して相談・指導を受ける場合を前提とすること。

(4)学校外の公的機関や民間施設における学習の計画や内容がその学校の教育課程に照らし適切と判断される場合には,当該学習の評価を適切に行い指導要録に記入したり, また,評価の結果を通知表その他の方法により,児童生徒や保護者,当該施設に積極 的に伝えたりすることは,児童生徒の学習意欲に応え,自立を支援する上で意義が大きいこと。なお,評価の指導要録への記載については,必ずしもすべての教科・観点 について観点別学習状況及び評定を記載することが求められるのではないが,児童生徒のおかれている多様な学習環境を踏まえ,その学習状況を文章記述するなど,次年 度以降の児童生徒の指導の改善に生かすという観点に立った適切な記載に努めることが求められるものであること。

3 留意事項

(1)義務教育段階の学校は,各個人の有する能力を伸ばしつつ,社会において自立的に生きる基礎を養うとともに,国家・社会の形成者として必要とされる基本的な資質を 培うことを目的としており,その役割は極めて大きいことから,学校教育の一層の充実を図るための取組がもとより重要であること。すなわち,児童生徒が不登校になってからの事後的な取組に先立ち,児童生徒が不登校にならない,魅力ある学校づくり を目指すとともに,いじめ,暴力行為,体罰等を許さないなど安心して教育を受けられる学校づくりを推進することが重要であること。

(2)不登校児童生徒への支援については児童生徒が不登校となった要因を的確に把握し, 学校関係者や家庭,必要に応じて関係機関が情報共有し,組織的・計画的な,個々の 児童生徒に応じたきめ細やかな支援策を策定することや,社会的自立へ向けて進路の 選択肢を広げる支援をすることが重要であること。さらに,既存の学校教育になじめない児童生徒については,学校としてどのように受け入れていくかを検討し,なじめない要因の解消に努める必要があること。その際,保健室,相談室及び学校図書館等 を活用しつつ,徐々に学校生活への適応を図っていけるような指導上の工夫が重要で あること。また,いじめられた児童生徒又はその保護者が希望する場合には,柔軟に 学級替えや転校の措置を活用することが考えられること。

4 指導要録の様式等について 上記の取扱いの際の指導要録の様式等については,平成31年3月29日付け30文科初第1845号「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」を踏まえ,出席日数の内数として出席扱いとした日数及び児童生徒が通所又は入所した学校外の施設名を記入すること。

(別記2) 不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱いについて

1 趣旨
不登校児童生徒の中には,学校への復帰を望んでいるにもかかわらず,家庭にひきこもりがちであるため,十分な支援が行き届いているとは言えなかったり,不登校であることによる学習の遅れなどが,学校への復帰や中学校卒業後の進路選択の妨げになって いたりする場合がある。このような児童生徒を支援するため,我が国の義務教育制度を前提としつつ,一定の要件を満たした上で,自宅において教育委員会,学校,学校外の公的機関又は民間事業者が提供するICT等を活用した学習活動を行った場合,校長は,指導要録上出席扱いとすること及びその成果を評価に反映することができることとする。

2 出席扱い等の要件
義務教育段階における不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行うとき,当該児童生徒が在籍する学校の長は,下記の要件を満たすとともに,その学習活動が,当該児童生徒が現在において登校を希望しているか否かにかかわらず,自ら登校を希望した際に,円滑な学校復帰が可能となるような学習活動であり,かつ,当該児童生徒の自立を助けるうえで有効・適切であると判断する場合に,指導要録上出席扱いとすること及びその成果を評価に反映することができる。

(1)保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること。

(2)ICT等を活用した学習活動とは,ICT(コンピュータやインターネット,遠隔教育システムなど)や郵送,FAXなどを活用して提供される学習活動であること。

(3)訪問等による対面指導が適切に行われることを前提とすること。対面指導は,当該 児童生徒に対する学習支援や将来の自立に向けた支援などが定期的かつ継続的に行われるものであること。

(4)学習活動は,当該児童生徒の学習の理解の程度を踏まえた計画的な学習プログラムであること。なお,学習活動を提供するのが民間事業者である場合には,「民間施設 についてのガイドライン(試案)」(別添3)を参考として,当該児童生徒にとって適切であるかどうか判断すること。(「学習活動を提供する」とは,教材等の作成者 ではなく,当該児童生徒に対し学習活動を行わせる主体者を指す。)

(5)校長は,当該児童生徒に対する対面指導や学習活動の状況等について,例えば,対面指導に当たっている者から定期的な報告を受けたり,学級担任等の教職員や保護者 などを含めた連絡会を実施したりするなどして,その状況を十分に把握すること。

(6)ICT等を活用した学習活動を出席扱いとするのは,基本的に当該児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けられないような場合に行う学習活動であること。なお,上記(3)のとおり,対面指導が適切に行われていることを前提とすること。

(7)学習活動の成果を評価に反映する場合には,学校が把握した当該学習の計画や内容がその学校の教育過程に照らし適切と判断される場合であること。

3 留意事項

(1)この取扱いは,これまで行ってきた不登校児童生徒に対する取組も含め,家庭にひきこもりがちな義務教育段階の不登校児童生徒に対する支援の充実を図り,社会的な自立を目指すものであることから,ICT等を活用した学習活動を出席扱いとすることにより不登校が必要な程度を超えて長期にわたることを助長しないよう留意する こと。

(2)ICTを活用する場合には,個人情報や著作権の保護,有害情報へのアクセス防止 など,当該児童生徒に対して必要な事前の指導を行うとともに,その活用状況についての把握を行うこと。その際,ICTの活用について保護者にも十分な説明を行うとともに,活用状況の把握について必要な協力を求めること。

(3)教職員や不登校児童生徒の教育に関する専門家以外の者が対面指導を行う場合には, 教育委員会や学校等が適切な事前の指導や研修,訪問活動中の援助を行うなど,訪問する者の資質向上等に努めること。

(4)出席扱いの日数の換算については,学校や教育委員会が,例えば,対面指導の日数や学習活動の時間などを基準とした規程等を作成して判断することなどが考えられること。

(5)ICT等を活用した学習活動の成果を評価に反映する場合の指導要録への記載については,必ずしもすべての教科・観点について観点別学習状況及び評定を記載することが求められるのではないが,児童生徒の学習状況を文章記述するなど,次年度以降 の指導の改善に生かすという観点に立った適切な記載がなされるようにすること。また,通知表その他の方法により,児童生徒や保護者等に学習活動の成果を伝えた りすることも考えられること。

(6)このほか,本制度の活用に当たっては,別紙を参照すること。

4 指導要録の様式等について

上記の取扱いの際の指導要録の様式等については,平成31年3月29日付け30文科初第1845号「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の 学習評価及び指導要録の改善等について」を踏まえ,出席日数の内数として出席扱いと した日数及び児童生徒が通所又は入所した学校外の施設名を記入すること。

(別紙)指導要録上の出席扱いに係る積極的な対応の留意点

1 ICT等を活用した学習活動とは例えばどのようなものがありますか。

○ 「ICT等を活用した学習活動」には,インターネットのほか,郵送や電子メール,FAXなどを活用して提供されるものも含まれ,例えば次のような例があり ます。

・民間業者が提供するICT教材を活用した学習
・パソコンで個別学習できるシステムを活用した学習
・教育支援センター作成のICT教材を活用した学習
・学校のプリントや通信教育を活用した学習
・ICT機器を活用し,在籍校の授業を自宅に配信して行う学習(同時双方向型授業配信やオンデマンド型授業配信)

2 在籍校の校長が,出席扱いについて有効・適切であると判断する場合の基準がありますか。

○ 一人一人の児童生徒の状況や学校,地域の実態が違うため,文部科学省から一律の基準を示すことはしていません。しかし,児童生徒の努力を学校として評価し, 将来的な社会的自立に向けた進路選択を支援するという趣旨から,学校や教育委員 会において一定の基準を作成しておくことは必要であると考えます。

また,既に基準を作成している場合でも,それが古いものであれば,今の時代の状況にあったものになるよう見直すことも検討すべきです。

3 当該生徒が指導要録上の出席扱いになることにより,具体的にどんなメリットが ありますか。

○ 不登校であることによる学習の遅れなどが,学校への復帰や卒業後の進路選択の妨げになっている場合もあることから,このような児童生徒に対し,学習等に対する意欲やその成果を認め,適切に評価することは,自己肯定感を高め,学校への復 帰や社会的自立を支援することにつながります。

4 訪問等による対面指導は誰が行えばよいですか。

○ 対面指導を行う者としては,在籍校の教員やスクールカウンセラー,スクールソ ーシャルワーカーなどの専門家のほか,教育支援センターの職員,教育委員会等に よる事前の指導・研修を受けたボランティアスタッフなども想定されます。

5 計画的な学習プログラムとはどのようなものですか。

○ 学年や個々の学習の理解の程度に応じたものであり,在籍校の年間指導計画に準 拠した形で月ごとや学期ごとなどある程度長期的な計画になっていることが望ま しいと考えています。民間業者が提供する教材を活用する場合などは,あらかじめ 決められている学習プログラムを活用してもかまいません。

6 学習活動の評価はどのようにすればよいですか。

○ 出席扱いとした場合,必ずその成果を評価に反映しなければならないわけではあ りませんが,すべての教科・観点について観点別学習状況及び評定を記載できない 場合でも,たとえば自宅における学習状況を所見欄に文章記述するなど,学習の努 力を認め,次年度以降の指導に生かすという観点から適切な記載がのぞまれます。

また,民間業者が提供する教材やインターネット上の学習システムを活用する場 合は,当該教材の学習履歴や学習時間,確認テストの結果などに基づいて評価を行 うことも考えられます。

7 指導要録上の出席扱いと判断しなかった事例がありますか。

○ 出席扱いと判断しなかったケースについては,教育委員会への聞き取りから,例えば次のような事例を把握しています。

・学校が,家庭訪問等による対面指導を設定したが,家庭の協力が得られないことから,当該児童の状況や学習状況の様子が十分確認できなかった。
・無料のインターネット学習プログラムを利用していたが,当該プログラムにおける学習のねらいや内容が明確でなかった。

8 出席扱いと判断した場合に,留意すべき点はありますか。

○ 自宅におけるICT等を活用した学習活動を「出席扱い」とすることにより, 不登校が必要な程度を超えて長期にわたることを助長しないよう留意する必要 があります。家庭にひきこもりがちな期間が長期化しないよう,個々の児童生徒 の状況を踏まえつつ学校外の公的機関や民間施設等での相談・指導を受けること ができるように段階的に調整していくことも大切だと考えます。

参考事例

【1】教育支援センターとの連携page8image3790137504

(1)学習活動の内容

教育支援センターであらかじめ学習プログラムを内蔵しているパソコンを貸し出し,同プログラムの計画に沿って自宅学習ができるようにしている。これによって,一人ひとりの学習履歴を管理することもできる。

(2)対面指導

教育支援センターの支援員が家庭訪問をするなどして面談するほか,在籍校の教職員による 家庭訪問も定期的に実施している。ICT学習支援として研修を受けた対面指導員が,対面指導を行うこともある。

(3)保護者との連携

教育支援センターの支援員が家庭訪問をするなどして保護者とも面談しているほか,教育支援センターから学校に毎月報告書を提出し,それをもとに学校が保護者とも学習状況の確認・共有をしている。

(4)出席扱いと評価

教育支援センターからの報告書等に基づき,学習内容や学習時間を踏まえて学校長の判断で出席扱いにしている。通知表の所見欄にコメントとして記載する場合もある。 page8image3831611984

【2】民間の学習教材を活用page8image3790947664

(1)学習活動の内容

民間業者が提供するインターネット上の学習教材を活用し,同教材における個人に応じた学習計画(教科書に準拠したもの)に沿って自宅学習をしている。

(2)対面指導

担任や学年主任,SSWが週1回(必要に応じてそれ以上)家庭訪問している。

(3)保護者との連携

担任等が定期的に電話連絡や家庭訪問を行い,学習状況等の聞き取りや取組へのアドバイス等を行っている。

(4)出席扱いと評価

学習内容や学習時間を踏まえて学校長の判断で出席扱いにしている。学校と民間の学習教材とでは評価基準が異なるため,別途学校の課題プリントを送付し,その取組内容を確認して所 見の評価としている。

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