外傷後ストレス障害(PTSD)

スポンサードリンク

外傷後ストレス障害(PTSD:Post Traumatic Stress Disorder)とは

天災、事故、犯罪、虐待などによって、命の危機や強い精神的衝撃を受けることで、激しい苦痛や生活に影響を及ぼすストレス障害。症状が1ヶ月未満の場合は、ASD(急性ストレス障害)と呼ばれる。PTSD臨床診断面接尺度(CAPS)を用いて診断する。

外傷後ストレス障害の基本症状

以下の3症状が、PTSDと診断するための基本的症状。

侵入症状

出来事やその時の感情がフラッシュバックしたり、悪夢として出てくる。身体生理的反応(動悸や発汗)を伴う。

回避症状

その出来事に関連する場面や人物を避ける。

認知と気分の陰性の変化

否定的認知、興味や関心の喪失、落ち込み。認知と気分が変容するため、周囲からは人格が変わったように見える。

覚醒度と反応性の著しい変化

常に緊張感、警戒心を持ち、刺激に過敏になる。睡眠障害などが出てくる。

DSM5における診断基準

A.実際にまたは危うく死ぬ、重症を負う、性的暴力を受ける出来事への、以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の形による曝露

(1)心的外傷的出来事を直接体験する。

(2)他人に起こった出来事を直に目撃する。

(3)近親者または親しい友人に起こった心的外傷的出来事を耳にする。家族または友人が実際に死んだ出来事または危うく死にそうになった出来事の場合、それは暴力的なものまたは偶発的なものでなくてはならない。

(4)心的外傷的出来事の強い不快感をいだく細部に、繰り返しまたは極端に曝露される体験をする(例:遺体を収集する緊急対応要員、児童虐待の詳細に繰り返し曝露される警官)。

注:基準A4 は、仕事に関連するものでない限り、電子媒体、テレビ、映像、または写真による曝露には適用されない。

B.心的外傷的出来事の後に始まる、その心的外傷的出来事に関連した、以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の侵入症状の存在

(1)心的外傷的出来事の反復的、不随意的、および侵入的で苦痛な記憶

注:6歳を超える子どもの場合、心的外傷的出来事の主題または側面が表現された遊びを繰り返すことがある。

(2)夢の内容と情動またはそのいずれかが心的外傷的出来事に関連している、反復的で苦痛な夢

注:子どもの場合、内容のはっきりしない恐ろしい夢のことがある。

(3)心的外傷的出来事が再び起こっているように感じる、またはそのように行動する解離症状(例:フラッシュバック)
(このような 反応は1つの連続体として生じ、非常に極端な場合は現実の状況への認識を完全に喪失するという形で現れる)。 注:子どもの場合、心的外傷に特異的な再演が遊びの中で起こることがある。

(4)心的外傷的出来事の側面を象徴するまたはそれに類似する、内的または外的なきっかけに曝露された際の強烈なまたは遷延する心理的苦痛

(5)心的外傷的出来事の側面を象徴するまたはそれに類似する、内的または外的なきっかけに対する顕著な生理学的反応

C.心的外傷的出来事に関連する刺激の持続的回避。心的外傷的出来事の後に始まり、以下のいずれか1 つまたは両方で示される。

(1)心的外傷的出来事についての、または密接に関連する苦痛な記憶、思考、または感情の回避、または回避しようとする努力

(2)心的外傷的出来事についての、または密接に関連する苦痛な記憶、思考、または感情を呼び起こすことに結びつくもの(人、場所、会話、行動、物、状況)の回避、または回避しようとする努力

D.心的外傷的出来事に関連した認知と気分の陰性の変化。心的外傷的出来事の後に発現または悪化し、以下のいずれか2つ(またはそれ以上)で示される。

(1)心的外傷的出来事の重要な側面の想起不能(通常は解離性健忘によるものであり、頭部外傷やアルコール、または薬物など他の要因によるものではない)

(2)自分自身や他者、世界に対する持続的で過剰に否定的な信念や予想(例:「私が悪い」、「誰も信用できない」、「世界は徹底的に危険だ」、「私の全神経系は永久に破壊された」)

(3)自分自身や他者への非難につながる、心的外傷的出来事の原因や結果についての持続的でゆがんだ認識

(4)持続的な陰性の感情状態(例:恐怖、戦慄、怒り、罪悪感、または恥)

(5)重要な活動への関心または参加の著しい減退

(6)他者から孤立している、または疎遠になっている感覚

(7)陽性の情動を体験することが持続的にできないこと(例:幸福や満足、愛情を感じることができないこと)

E.心的外傷的出来事と関連した、覚醒度と反応性の著しい変化。心的外傷的出来事の後に発現または悪化し、以下のいずれか2つ (またはそれ以上)で示される。

(1)人や物に対する言語的または肉体的な攻撃性で通常示される、(ほとんど挑発なしでの)いらだたしさと激しい怒り

(2)無謀なまたは自己破壊的な行動

(3)過度の警戒心

(4)過剰な驚愕反応

(5)集中困難

(6)睡眠障害(例:入眠や睡眠維持の困難、または浅い眠り)

F.障害(基準B,C,DおよびE)の持続が1 カ月以上

G.その障害は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

H.その障害は、物質(例:医薬品またはアルコール)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。

PTSD症状評価尺度

CAPS(Clinician-Administered PTSD Scale)

米国国立PTSDセンターで開発されたPTSD診断用構造化面接尺度。

IES-R(改訂出来事インパクト尺度)

複雑性PTSD

持続的なトラウマ体験をきっかけとして発症し、PTSDの主症状に加え、感情の調整や対人関係に困難をきたす状態。

第5回公認心理師試験に出題

問139  23 歳の女性 A、会社員。高校時代にわいせつ行為の被害に遭った。大学卒業後、会社員となったが、今年の社員旅行の際に、仕事の関係者から性行為を強要されそうになり、何とかその場から逃げ出したものの、帰宅後に強い心身の不調を自覚した。その後3か月経っても症状が改善しないため、精神科受診に至った。同じような悪夢を繰り返し見ることが続き、よく眠れない。「このような被害に遭うのは、私が悪い」、「自分は駄目な人間だ」と話す。A の状態像を把握することを目的に、公認心理師が行う可能性のある心理的アセスメントとして、最も適切なものを 1 つ選べ。

  1. CAPS
  2. DN-CAS 認知評価システム
  3. JDDST-R
  4. KABC-II
  5. TEG
解答

第1回公認心理師試験に出題

28歳の女性A、会社員。Aは、3か月前に夜遅く一人で歩いていたところ、強制性交等罪(強姦)の被害に遭った。その後、気がつくと事件のことを考えており、いらいらしてささいなことで怒るようになった。仕事にも集中できずミスが目立つようになり、上司から心配されるまでになった。「自分はどうして事件に巻き込まれたのか。こんな私だから事件に遭ったのだろう。後ろから足音が聞こえてくると怖くなる。上司も私を襲ってくるかもしれない」と思うようになった。

Aに認められていない症状として、正しいものを1つ選べ。

  1. 侵入症状
  2. 回避症状
  3. 覚醒度と反応性の変化
  4. 認知と気分の陰性変化
解答

スポンサードリンク

シェアお願いします

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください