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問71 事例
15歳の男子A、中学3年生。Aは非行傾向があり、中学校内で窃盗事件を起こし、学校の指導でスクールカウンセラーと面接した。両親は離婚しており、Aと二人暮らしの実父とは関係が悪く居場所がないことなど、自分から家庭の事情を素直に話した。Aとスクールカウンセラーとのラポールはスムーズに形成できたと考えられた。スクールカウンセラーは父親との関係がAの非行の背景にあると考え、継続面接の必要性を感じ週1回の面接を打診したところ、Aは快諾した。しかし、翌週Aは相談室に来なかった。担任教師の話しでは、Aは「あんな面接には二度と行かない」と話しているとのことだった。
Aへの対応として、最も適切なものを1つ選べ。
- 独自の判断で家庭訪問する。
- 児童虐待を疑い、実母に連絡する。
- Aには伝えず父親を学校に呼び出す。
- Aの対人不信に留意し、面接の枠組みをしっかり保つよう工夫する。
- Aをよく知るクラスメイトに事情を話し、Aを面接に連れて来てもらう。
公認心理師法をもとに解答。
①は、第42条を遵守した判断とは言えない
第42条 (連携等)
公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。
②父親に関する情報としては、「両親は離婚しており、Aと二人暮らしの実父とは関係が悪く居場所がない」ということしか、表記されていないため、児童虐待を疑う根拠に乏しい。
③、⑤については、第41条を遵守した判断とは言えない。
第41条(秘密保持義務)
公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。
問72 事例
35歳の男性A、営業職。1か月ほど前に、直属の上司Bからそろそろ課長に昇進させると言われ、Aは喜んだ。昇進の準備として部署の中期目標を作成するように指示されたが、いざ書こうとすると何も書けず、不安になり他の仕事も手につかなくなった。Aの様子を見かねたBの勧めで、社内の相談室に来室した。「中期目標はどう書けばいいか分からない。こんな状態で課長になる自信がない」と訴える。Aの許可を得てBに話を聞くと、Aの営業成績は優秀で、部下の面倒見もよく、Bとしても会社としても、課長に昇進することを期待しているとのことだった。
相談室の公認心理師の対応として、最も適切なものを1つ選べ。
- Aに中期目標をどのように書くべきか助言する。
- 現在Aは抑うつ状態であるため、まず精神科への受診を勧める。
- 昇進はチャンスと捉えられるため、目前の中期目標の作成に全力を尽くすよう励ます。
- 目前の課題に固着するのではなく、キャリア全体から現在の課題を眺めることを支援する。
- 現在のAには中期目標の作成は過重な負荷であるため、担当を外してもらうよう助言する。
Aは、「中期目標はどう書けばいいか分からない。こんな状態で課長になる自信がない」と訴えている。
Bは、Aの営業成績は優秀で、部下の面倒見もよいと発言している。
よって、書き方がわからないというような能力的な問題ではなく、精神的な問題からくるものと推測されるため、①は不適切。
②、③、⑤については、判断するに至る情報が少ない。
問73 事例
26歳の男性。職場の同僚たちの会話が自分へ当てつけられていると訴えて家族とともに来院した。2か月前から自分の考えが筒抜けになっていると思うようになった。「いつも見張られているので外出できない」と、周囲を警戒しながら話した。身体疾患、過度の飲酒及び違法薬物の摂取はない。
この患者に対する治療として、最も適切なものを1つ選べ。
- 抗不安薬
- 気分安定薬
- 抗精神病薬
- 対人関係療法
- 認知行動療法
「職場の同僚たちの会話が自分へ当てつけられている」は妄想、「自分の考えが筒抜けになっている」は、思考伝播で、統合失調症を疑う。2ヶ月前ということからも、統合失調症の診断基準には当てはまらないが、統合失調様障害と判断。抗精神病薬は、統合失調症によく使われる薬である。
問74 事例
75歳の女性A、独身の息子と二人暮らしである。Aは2年くらい前からスーパーで連日同じ食材を重ねて買うようになり、スーパーからの帰り道に迷うなどの行動が見られ始めた。午前中から散歩に出たまま夕方まで帰らないこともあった。最近、息子の怒鳴り声が聞こえるようになり、時々Aの顔にあざが見られるようになったため、近所の人が心配して、市の相談センターに相談した。
市の対応として、不適切なものを1つ選べ。
- 虐待担当部署への通報
- 息子への指導及び助言
- Aの居室の施錠の提案
- 徘徊時に備えた事前登録制度の利用
- 民生委員への情報提供と支援の依頼
「怒鳴り声」「あざ」など、虐待が疑われるため、高齢者虐待防止法をと認知症である可能性を基に解答。
第7条 により、①は適切であるため除外。
養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
2 前項に定める場合のほか、養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報するよう努めなければならない。
第6条により、②は適切であるため除外。
市町村は、養護者による高齢者虐待の防止及び養護者による高齢者虐待を受けた高齢者の保護のため、高齢者及び養護者に対して、相談、指導及び助言を行うものとする。
各自治体が行なっている徘徊高齢者等事前登録制度を利用することは有効であるため、④は適切であるため、除外。
第16条により、⑤は適切であるため除外。
市町村は、養護者による高齢者虐待の防止、養護者による高齢者虐待を受けた高齢者の保護及び養護者に対する支援を適切に実施するため、老人福祉法第二十条の七の二第一項に規定する老人介護支援センター、介護保険法第百十五条の四十六第三項の規定により設置された地域包括支援センターその他関係機関、民間団体等との連携協力体制を整備しなければならない。この場合において、養護者による高齢者虐待にいつでも迅速に対応することができるよう、特に配慮しなければならない。
認知症とみられる高齢者の居室に鍵をつけることは、リスクが大きい。③は不適切であるため正答。
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問75 事例
24歳の男性A。Aは大学在学中に自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉の診断を受けた。一般就労を希望し、何社もの就職試験を受けたが採用されなかった。そこで、発達障害者支援センターに来所し、障害者として就労できる会社を紹介され勤務したが、業務上の失敗が多いため再度来所した。
この時点でのAへの支援として、不適切なものを1つ選べ。
- ジョブコーチをつける。
- 障害者職業センターを紹介する。
- 介護給付の1つである行動援護を行う、
- 勤務している会社にAの特性を説明する。
- 訓練等給付の1つである就労移行支援を行う。
①ジョブコーチは、障害者に対しての直接的で専門的な支援を行い、職場適応、定着を図ることを目的として活動するため、適切。
②地域障害者職業センターでは障害者に対し、職業評価、職業指導、職業準備支援及び職場適応援助等の各種の職業リハビリテーションを実施するため、適切。
③行動援護は、知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有する障がい者等が対象となるため、不適切。
④現在Aが務めている会社は、一般就労ではなく障害者雇用であるため、Aの特性に合わせた業務を行えるように説明することは妥当。
⑤就労移行支援は、一般企業への就職を目指す障害のあるものを対象に就職に必要な知識やスキル向上のためのサポートをおこなうこと。元々、Aは一般就労を希望していたということもあり、就労移行支援は適切と言える。
問76 事例
19歳の女性A。Aは高校卒業後に事務職のパート勤務を始めた。もともと言語表現が苦手で他者とのコミュニケーションに困難を抱えていた。就職当初から、仕事も遅くミスも多かったことから頻繁に上司に叱責され、常に緊張を強いられるようになった。疲れがたまり不眠が出現し、会社を休みがちになった。家事はこなせており、将来は一人暮らしをしたいと思っているという。WAIS-Ⅲを実施した結果、全検査IQ77、言語生IQ73、動作性IQ 86。群指数は言語理解82、知覚統合70、作動記憶62、処理速度72であった。
この検査結果の解釈として、正しいものを1つ選べ。
- 視覚的な短期記憶が苦手である。
- 聴覚的な短期記憶が苦手である。
- 全検査IQは「平均の下」である。
- 下位検査項目の値がないため判断できない。
作動記憶は聴覚的短期記憶と関連し、処理速度は視覚的短期記憶と関連する。検査結果からは、聴覚的短期記憶の方がより苦手と言える。
③全検査IQ77は、「平均の下」ではなく知的障害との境界域である。
④下位検査項目があれば、詳細な能力がわかるが、群指数の4つの数値だけでも解釈できることはある。
問77 事例
30歳の女性A、事務職。Aはまじめで仕事熱心であったが、半年前から業務が過重になり、社内の相談室の公認心理師Bに相談した。その後、うつ病の診断を受け、3か月前に休業した。休業してからも時折、Bには近況を伝える連絡があった。本日、AからBに「主治医から復職可能との診断書をもらった。早く職場に戻りたい。手続を進めてほしい」と連絡があった。
このときの対応として、適切なものを2つ選べ。
- AとBで復職に向けた準備を進める。
- Bが主治医宛に情報提供依頼書を作成する。
- Aは職場復帰の段階となったため相談を打ち切る。
- Aが自分で人事課に連絡を取り、復職に向けた手続を進めるように伝える。
- Aの同意を得て、Bが産業医にこれまでの経緯を話し、必要な対応を協議する。
ちなみに、公式解答が出るまでは、②と⑤にしていました。
①と②
公認心理師法の42条の2と関連。
第42条の2
公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。
よって、①は不適切で、②は診断書をAが持参しているのであれば、それをAの承諾の上、開示してもらうことになる。加えての情報提供書は必要とは言えない。
③については、復職後のケアも必要になってくるため、早期に相談を打ち切ることは得策とは言えない。よって、④と⑤の回答が妥当と言える。
問78 公認心理師の地域連携の在り方として、最も適切なものを1つ選べ。
- 地域の同じ分野の同世代の者たちと積極的に連携する。
- 他の分野との連携に、自身の分野の専門性の向上が前提である。
- 医師からは指示を受けるという関係であるため、連携は医師以外の者と行う。
- 既存のソーシャルサポートネットワークには入らず、新たなネットワークで連携する。
- 業務を通じた連携を基本とし、業務に関連する研究会や勉強会を通して複数の分野との連携を行う。
公認心理師法の42条、43条と関連。
第42条
公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。
第43条
公認心理師は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、第二条各号に掲げる行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。
①連携は、同世代に限定されるものではない。
②資質向上の責務は、第43条に明記。しかし、資質向上の責務は、努力義務である他、「前提」とまでは言えない。
③保険医療を提供する者とも連携を保つと第42条に明記。指示を受けるだけの関係ではない。
④既存も新規も必要なネットワークである。
⑤第42条には、「公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。」と記載。公式解答は⑤。「業務に関連する研究会や勉強会を通して」という記載が腑に落ちないですが・・・。
問79 認知心理学について、最も適切なものを1つ選べ。
- まとまりのある全体性を重視する。
- 内観と実験との2つを研究手法とする。
- 観察可能な刺激と反応との関係性を重視する。
- 心的過程は情報処理過程であるという考え方に基づく。
- 心理の一般性原理を背景にしながら個人の個別性を重視する。
①全体性を重視したのは、ゲシュタルト心理学である。
②実験状況下での内観を研究手法としたのは、ヴントの内観法である。
③観察可能な刺激と反応との関係性を重視したのは、ワトソンの行動主義心理学である。
⑤個人の個別性を重視するのは、人間性心理学の特徴である。
問80 認知療法で用いられる手法として、最も適切なものを1つ選べ。
- ラポール
- 自由連想法
- 非指示的方法
- 系統的脱感作法
- 非合理的信念を変容させる方法
①ラポールはどのような手法でも重要とされる、カウンセラーとクライエントとの心的状態である。
②自由連想法は、精神分析療法で用いられる手法。
③非指示的方法は、クライエント中心療法の手法。
④系統的脱感作法は、行動療法で用いられる手法。
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