臨床心理学における科学と擬似科学

Lilienfeld,S.O., Lohr,J.M,Lynn,S.Jは,この著書によって、現代の臨床心理学において,科学的に支持された技法と科学的に支持されていない技法を区別することを試みている。

しかし,この著者は,臨床心理学を否定しているわけではない。

「私たちの任務には,ただ暴く―もちろんあるケースでは暴くことが科学における必要な活動ではあるが―ことだけではなく,啓発することも含まれている。新奇で表面的には信じがたいすべての方法が必ずしも価値がなかったり,効果がないわけではない。新しくしかも検証されていない技法を反動的に棄却してしまうことは,盲目的な受容と同様に有害な忠告である」

と述べることから始め,結論的考察と構成的改善策という章でしめくくっている。この章の題からも,単に臨床心理学を否定しているというわけではなく,現在の臨床心理学の問題点を挙げた上で,そこを精査し,改善していかなければならないという,警鐘をならしているということが伝わるであろう。

また,

「本書が明るみに出した厳しい現実にもかかわらず,これらの改善策が使われるならば,臨床心理学における疑似科学の問題は最終的には改善に向かっていくであろう」

 

とし,臨床心理学に対する5つの処方箋を示している。簡単にまとめると,以下のようになる。

  1. すべての臨床心理学の訓練プログラムには,批判的な思考の技能,特に研究における疑似科学的方法から科学的方法を区別するのに必要な技能を含んだ本式な訓練が必要とされる。
  2. 臨床心理学の領域は,実証的に支持された治療法(EST:Chambless&Ollendick,2001)ばかりでなく明らかに実証的支持を欠いている治療法をも注意深く同定すべきである。「避けるべき心理療法」のリストを公式に作り上げることは,実践家にとっても心理療法を受けるかもしれない人にとっても,重要な出発点になる。
  3. APA(アメリカ心理学会)と他の心理学の組織は,実践家が強固な科学的事実に基づいた教育を続けることを保障するようにさらに活発な役割を演じなければならない。
  4. APAと他の心理学組織は,心理療法とアセスメント技法に関する一般向けの出版物やその他のもの(たとえばインターネット)における間違った主張と戦うために,より目に見える形で公式的な役割を演じなければならない。
  5. APAとその他の組織は,適切な科学に基づいていない,あるいは害があるようにみえる治療技法およびアセスメントに従事する実践家に厳しい制裁措置をほどこすようにしなければならない。

 

「ごく最近まで,臨床心理学の領域では,疑似科学あるいは問題視される実践法によって起こってくる脅威を語ることにほとんど関心が持たれなかった」と述べている。この著書が出版されたのが,2007年のことであるから,いかに最近のことであるかはわかる。

シェアお願いします

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください