認知症とは
脳の病気が原因で、記憶力や判断力(高次脳機能)が低下し、日常生活に支障が出ている状態のこと。いったんできあがった知能が脳や身体のさまざまな原因によって、一過性や一時的ではなく持続的に低下し日常の社会生活や対人関係に支障をきたす状態。
以下の2領域以上の認知機能や行動の障害
(1)記銘記憶障害
- 何度も同じことを聞く、繰り返す
- 置き忘れ、行事・約束を忘れる
- よく知った道で迷う
(2)論理的思考・遂行機能・判断力の低下
- 危険性の理解の低下
- 財産管理ができない
- 判断力の低下
- 複雑・連続的な仕事ができない
(3)視空間機能障害
- 顔や一般的な物の識別ができない
- 簡単な道具が使えない、服が着られない
(4)失語
- 会話中に簡単な単語の理解ができない
- 言葉や単語が出てこない、聞き間違い
(5)人格・行動・態度の変化
- 焦燥のような感情の変動
- モチベーションや自発性の低下・無関心・活力低下・引きこもり
- 以前の活動への興味の低下、思いやりの欠如、強迫行動、反社会的行動
DSM-5
DSM-5では、神経認知障害群(neurocognitive disorders)に含まれている。
A. 1つ以上の認知領域(複雑性注意、遂行機能、学習および記憶、言語、知覚・運動、社会的認知)において、以前の行為水準から有意な認知の低下があるという証拠が以下に基づいている
(1)本人、本人をよく知る情報提供者、または臨床家による、有意な認知機能の低下があったという概念、および
(2)標準化された神経心理検査によって、それがなければ他の定量化された臨床的評価によって記録された、実質的な認知行為の障害
B. 毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害する(すなわち、最低限、請求書を支払う、内服薬を管理するなどの、複雑な手段的日常生活動作に援助を必要とする)
C. その認知欠損は、せん妄の状況でのみ起こるものではない
D. その認知欠損は、他の精神疾患によってうまく説明されない(例: うつ病、統合失調症)
脳血管性認知症とは
脳梗塞や脳出血などの脳の血管障害を原因とする認知症
- 物忘れが目立たず、家の中でじっとしていることが多いことから、家族の手がかからないために、見逃されていることが多い
- 放置されると、ますますじっとしていることが多くなり、新たな脳梗塞や脳出血が起こり、急激に症状が進むことがある→階段状に悪化
- 脳梗塞などの血管障害が新たに起こらなければ進行しないので、高血圧などの身体的なケアが予防のために重要
軽度認知障害(MCI:mild cognitive impairment)
物忘れが主たる症状だが、日常生活への影響はほとんどなく、認知症とは診断できない状態。正常と認知症の中間ともいえる状態。
- 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する。
- 本人または家族による物忘れの訴えがある。
- 全般的な認知機能は正常範囲である。
- 日常生活動作は自立している。
- 認知症ではない。
DSM-5
DSM-5では、神経認知障害群(neurocognitive disorders)に含まれている。
A. 1つ以上の認知領域(複雑性注意、遂行機能、学習および記憶、言語、知覚・運動、社会的認知)において、以前の行為水準から軽度の認知の低下があるという証拠が以下に基づいている
(1)本人、本人をよく知る情報提供者、または臨床家による、軽度の認知機能の低下があったという概念、および
(2)標準化された神経心理検査によって、それがなければ他の定量化された臨床的評価によって記録された、実質的な認知行為の障害
B. 毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害しない(すなわち、 最低限、請求書を支払う、内服薬を管理するなどの複雑な手段 的日常生活動作は保たれるが、以前より大きな努力、代償性方略、または工夫が必要であるかもしれない)
C. その認知欠損は、せん妄の状況でのみ起こるものではない
D. その認知欠損は、他の精神疾患によってうまく説明されない(例: うつ病、統合失調症)
MoCA(Montreal Cognitive Assessment)
MoCA、MoCA-J(Japanese version of MoCA)は視空間・遂行機能、命名、記憶、注意力、復唱、語想起、抽象概念、遅延再生、見当識からなる、MCIをスクリーニングする検査である。約10分という短い時間で評価することができる。合計で 30点満点であり、日本語版では 26 点以上が健常範囲と考えられる。
第5回公認心理師試験に出題
軽度認知障害[mildcognitiveimpairmen〈tMCI〉]に関する説明と して、適切なものを2つ選べ。
- 不可逆的な状態である。
- 日常生活動作は低下している。
- 記憶障害は診断の必須要件である。
- 認知機能評価には MoCA-J が有用である。
- DSM- 5 では、神経認知障害群に含まれる。
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