認知行動療法(CBT cognitive-behavioral-therapy)とは
従来の行動に焦点をあてた行動療法から、アルバート・エリスの論理療法や、アーロン・ベックの認知療法の登場により、認知や行動に焦点をあてることで発展してきた心理療法の技法の総称。うつ病、パニック障害、強迫性障害、不眠症、薬物依存症、摂食障害、統合失調症などに有効とされている。
認知行動療法の種類
認知再構成法
ある状況に対する自分の考え方・受け止め方(認知のクセ)にアプローチし、状況を客観的に捉え、自分を苦しくさせている考え方をバランスの取れた考え方に導く方法。うつ病患者のネガティブな思考に有効とされている。
問題解決技法
- 問題の提起:問題を整理して把握する
- 明確化・定式化:問題の本質を明らかにして、現実的に達成できそうな目標を立てる
- 解決法の考案:ブレインストーミングで、できるだけ多くの解決策を考え出す
- 意思決定:考え出した解決策の中で、より良い解決策を選ぶ
- 実施と検証:実際に選んだ解決策を実行して、振り返る
コラム法(思考記録法)とは
特定の場面で生じた思考や行動、感情などを記録し、整理、検討し、認知を修正していく方法である。
状況、感情、自動思考、合理的反応、結果などをコラムに記録することで、自分自身の認知的特徴を
整理、検討、修正していく。
項目 | 記入 | |
1 | 状況 | |
2 | 気分 | |
3 | 自動思考 | |
4 | 根拠 | |
5 | 反証 | |
6 | 適応思考 | |
7 | 心の変化 |
ソーシャルスキルトレーニング(social skills training:SST)とは
社会的スキル訓練、生活技能訓練とも呼ばれる。対人行動での課題を、ソーシャルスキルの不足と考え、必要なスキルを学習し、トレーニングを重ねることで習得させ、日常の対人行動の問題を解決していく方法。
統合失調症患者のリハビリ場面でも、病気によって低下した社会技能や生活技能を回復するための援助として、グループによるロールプレイ形式等で行われている。
ソーシャルスキルトレーニングの流れ
- ①教示
学習が必要なスキルの特定、トレーニングそのものについてや身につけるとどのようなメリットがあるかの説明
②モデリング
望ましいモデルの提示や不適切なモデルを見せて、考えさせる
③行動リハーサル
ロールプレイなどを用いてスキルの練習
④フィードバック
適切な行動の強化、不適切な行動の修正
⑤般化
習得したスキルを日常場面で使えるように実践していく
エクスポージャー(暴露療法)とは
不安や恐怖を抱いている物や状況に、あえて段階的に直面させ続ける治療法。持続エクスポージャー療法(Prolonged Exposure Therapy; PE) はPTSDに対する治療に有効とされている。
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)
acceptance(アクセプタンス):受け入れる
commitment(コミットメント):決める
心理的柔軟性と呼ばれる行動的側面を増やしていくことで、自分の行動を妨げる思考や感情にとらわれることなく、生活を送ることを目指す。第3世代の認知行動療法。ACTはプラグマティズムの一種である機能的文脈主義から生まれた。
クライアントが心理的柔軟性を増すことができるように6つのコアプロセスを提唱している。
- 脱フュージョン:思考やイメージ、記憶を「本物である」と思い込んでしまう傾向を低減する方略を学ぶ
- アクセプタンス&ウィリングネス:望ましくない私的経験(思考、感覚、衝動)でも追い払おうとせず、やってきて去っていくままにする
- いま現在との接触:「いま、ここ」に注意を向ける
- 観察する自己:超越的な自己の感覚とつながる
- 価値:自分にとって一番大切なことを明らかにする
- コミットメント:価値に従った目標をセッティングし、確実に実行する
第5回公認心理師試験に出題
うつ病に対する認知行動療法の主な技法として、不適切なものを 1 つ選べ。
- 認知再構成法
- 問題解決技法
- 活動スケジュール
- 持続エクスポージャー法
- ソーシャル・スキルズ・トレーニング〈SST〉
アクセプタンス&コミットメント・セラピー〈ACT〉の説明として、 誤っているものを 1 つ選べ。
- 第3世代の行動療法と呼ばれる。
- 「今、この瞬間」との接触を強調する。
- 心理的柔軟性を促進させることを目指す。
- 理論的背景として対人関係理論に基づいている。
- 価値に基づいた行動を積み重ねていくことを重視する。
第4回公認心理師試験に出題
マインドフルネスに基づく認知行動療法として、適切なものを2つ選べ。
- 内観療法
- 応用行動分析
- 弁証法的行動療法
- アサーション・トレーニング
- アクセプタンス&コミットメント・セラピー〈ACT〉
第1回公認心理師試験(追加試験)に出題
認知行動療法に影響を与えた人物と理論又は技法との組合せとして、 正しいものを1つ選べ。
- A. T. Beck ― 条件づけ理論
- D. Meichenbaum ― 学習性無力感理論
- G. A. Kelly ― 論理情動行動療法
- G. H. Bower ― 感情ネットワークモデル
- H. J. Eysenck ― 自己教示訓練法
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