アメリカの心理学者ウィットマーが臨床心理学を提唱してから100年以上経過しているが,未だに誰しもが納得する定義はなく,諸説存在する。
大塚(2004)によると,「基本構造的に,いわゆる臨床心理学は一般社会のさまざまの時代的な必要性に触発されて誕生し,活用されてきた。したがって,実践性をその基本性格とするところに学問としての不安定性が元々存在したのである」と述べている。このことからも,臨床心理学が一つの定義によって絞られることは難しいといえる。
野島(1995)は「臨床心理学の定義とは,人間の心理的適応・健康や発達,自己実現を援助するための,心理学的人間理解と心理学的方法を,実践的かつ理論的に探究する心理学の一領域である」と定義している。
高山(1999)は「主として心理・行動面の障害の治療・援助,およびこれらの障害の予防,さらに人々の心理・行動面のより健全な向上を図ることをめざす心理学の一専門分野」と定義している。
また,小川(1992)によれば「この学問は,心理的に問題をもった人(またはグループ)を,どのように理解し,どのような働きかけをしたらよいのか,臨床実践を通して試みること,こうした実践に伴う臨床的知見を蓄積し,整理し,体系化して,人間に関する新しい認識を獲得しようとすることである」としている。
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参考・引用
大塚義孝 2004 臨床心理学原論 (臨床心理学全書 1)誠信書房
野島一彦 1995 臨床心理学への招待 ミネルヴァ書房
高山巌 1999 臨床心理学 中島義明編 心理学辞典
小川捷之 1992 人間・文化―臨床心理学の周辺― 心理臨床大辞典 培風館
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