人事考課(人事評価)
企業において上司が部下の能力、業績、勤務態度・意欲(情意)などを評価すること。官公庁などでは勤務評定ともよばれる。昇給や賞与の査定をはじめ、昇進・昇格、配置・異動、教育訓練など人事管理に広く利用される。
評定効果・評定誤差・評定者バイアス
人事評価のプロセスで発生する傾向性、誤りのこと。近年、誤差として扱われてきた評価傾向を、誤差として悪者扱いするのではなく、単に評価にみられる特徴として評定効果と呼び、価値中立的な立場をとるようになってきた。
ハロー効果
ある対象を評価する時に、顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のこと。認知バイアスの一種である。一般にポジティブな方向への歪みを指すことが多いが、ネガティブな方向へのハロー効果も存在する。ハローとは、「後光が差す」という時の後光、聖像の光背や光輪のことで、後光効果、光背効果とも呼ばれる。
(e.g. ある人が難関大学卒であった場合、その人が学力においてだけでなく、人格的にも優れていると思い込んでしまうケース)
寛大化傾向
考課には、甘辛がつきものだが、その中で、甘くなる傾向を寛大化傾向と言う。
原因は、評価点レベルに対する認識が間違っている場合や評価点レベルに対する理解が甘かったり、部下に対する人情、信頼感、考課者の自信欠如、観察不十分等が起因する。
特に2次評定、3次評定を行う上級管理職の評定において、この傾向が強くなるといわれている。
中心化傾向
可もなく不可もなしという気持ちで「B」を付け、その結果、優劣の差があまりない状態をいう。原因は、考課者の事なかれ意識や、考課結果の差を出すことへのためらい、自身のない場合や、被考課者についてよく知らない場合などがある。
論理的錯誤
ある考課要素と他の考課要素との間に、論理的な関係があるとき、評定者が自分なりの理屈をつくり評定を行うことをいう。
(e.g. 検定試験に落ちたから理解力は低いだろうといった具合)
対比誤差
評定者自身の能力、適性、価値基準で被評定者をみることによって生ずるエラーをいう。たとえば、自分が身につけていない特性を相手が持っている場合、必要以上にそれを高く評価したりする。
自己類似性効果
評価者が何らかの面で自分と似ている部下を高く評価すること。
(e.g. 同じ学閥、同郷、同性など)
絶対評価法
特定の評価基準(絶対基準)に照らして、従業員個々人のもつ特性や行動、成果などを評価するもの。他者の評価が影響しないため、公平であると考えられてきた。
① 図式評定尺度法
個別の評価要素について程度や段階を表す尺度基準を設け、その基準に照らして評価対象者の実績や資質などを評価するもの。人事考課表を作成して、考課を行っている組織では、ほとんどの場合これが用いられている。
② 行動基準評定尺度法(BARS)
評価要素を職務関連の重大事象に限定するとともに、標語となる指標(評価段階)の形で定義した評価法
③ 目標管理制度(MBO)
職務に関連した具体的な目標を個人別に設定し、一定期間後における目標の達成度によって業績を評価する方法。
④照合表法・チェックリスト法
職務行動に関する記述肢と照らし合わせることによって、評価対象者の実際の行動を記録する方法。プロブスト法として知られている。
⑤自由記述法(所見法)
評価対象者の強み、弱み潜在的資質、育成提案などについて、あらかじめ決められた評価項目の制約を受けずに、評価者自身の言葉で自由に表現・記述することで評価する方法。
相対評価法
従業員の能力や業績を、全般的観点から相互に比較して評価する。他者の結果が影響してしまうことから、批判的にみられるが、多くの有利な点もある。
絶対評価より、評価が容易であったり、安定性、信頼性、評定誤差を統御しやすいことなどがあげられる。
①強制分布法
あらかじめ決められた分布に従って、評価対象者を序列化する評価する方法。
②序列法
評価対象者の業績全般、あるいは対象者が備えている資質全般について序列づけを行う方法である。単純序列法と交互序列法がある。
③一対比較法
対となった評価対象者を比較することによって、対象者の業績・資質を序列づけする評価法。総あたりのリーグ戦のようにして、順位を決めていく。
即時的決定
大半の面接では、開始後数分の印象(第一印象とよばれるもの)で採否の決定がされてしまうため、あがっていたり、まだ慣れていない時にだされた本人らしくない情報から評価が行われてしまうこと。
確証バイアス
履歴書や適性検査得点などからあらかじめ面接前にもった誤ったイメージ、先入観や思い込み、ステレオタイプな見方などを確証するような質問を行い、その誤った印象に合った評価を引き出してしまうこと。
(e.g. 無名大学卒業であれば、難しい質問をして、答えられなければ、やっぱり知的レベルが低いんだという印象を確認してしまうなど)
不都合な情報
企業としては、誤って優秀な人材を不採用にすることよりも、さえない人材を誤って採用してしまうことを気にする。したがって、減点評価になりがちであり、対象者の不都合な情報ばかりを重視する傾向をもつ。
厳格化
経験豊富な人事担当者が、面接において、厳しく評価する傾向にあること。
これは、過去の経験から積み上げた理想的応募者についてのステレオタイプ(例えば、野球でのイチローをみるプロスカウトマンのような)をもっているためと言われている。
非言語的行動
面接では、話の内容や流暢な話し方などの言語的要素が評価を大きく左右する。しかし、実際には、服装や姿勢、化粧、表情、身振りなどの非言語的行動も大きく影響してくる。しかし、これらの要素は一般的に仕事に関する能力や意欲とは関係が薄いため、この部分の評価が大きくなれば、誤った評価につながる。
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