合理的配慮とは
障害者権利条約第二条の中で、合理的配慮について定義されている。以下がその条文。
当条約の目的の為に以下のように用語について定義する。「コミュニケーション」には、点字や触覚によるコミュニケーション、平易な言語、読み上げ、補助的及び代替的な意思疎通の様式、手段、及び形態、利用可能な情報通信技術よるものも含む。「言語」には、手話その他の形態の非音声言語も含む。「障害による差別」とは、障害を理由とした万人に対する、政治権、経済権、社会権、文化権、市民権の全分野にわたる、人権と基本的自由のあらゆる区別、排除、制限を、さらに障害のある人に対する合理的配慮の欠如を意味する。「合理的配慮」とは障害のある人が他の人同様の人権と基本的自由を享受できるように、物事の本質を変えてしまったり、多大な負担を強いたりしない限りにおいて、配慮や調整を行うことである。「ユニバーサルデザイン」とは障害のある人も含めてすべての人に利用可能な生産物、環境、サービスのデザインを意味する。
つまり、合理的配慮とは、障害のある人が他の人と同様の権利や自由を受けれるように配慮することで、その配慮がなされないと障害者差別になるということが書かれています。
文部科学省による合理的配慮の例
1.共通
- バリアフリー・ユニバーサルデザインの観点を踏まえた障害の状態に応じた適切な施設整備
- 障害の状態に応じた身体活動スペースや遊具・運動器具等の確保
- 障害の状態に応じた専門性を有する教員等の配置
- 移動や日常生活の介助及び学習面を支援する人材の配置
- 障害の状態を踏まえた指導の方法等について指導・助言する理学療法士、作業療法士、言語聴覚士及び心理学の専門家等の確保
- 点字、手話、デジタル教材等のコミュニケーション手段を確保
- 一人一人の状態に応じた教材等の確保(デジタル教材、ICT機器等の利用)
- 障害の状態に応じた教科における配慮(例えば、視覚障害の図工・美術、聴覚障害の音楽、肢体不自由の体育等)
2.視覚障害
- 教室での拡大読書器や書見台の利用、十分な光源の確保と調整(弱視)
- 音声信号、点字ブロック等の安全設備の敷設(学校内・通学路とも)
- 障害物を取り除いた安全な環境の整備(例えば、廊下に物を置かないなど)
- 教科書、教材、図書等の拡大版及び点字版の確保
3.聴覚障害
- FM式補聴器などの補聴環境の整備
- 教材用ビデオ等への字幕挿入
4.知的障害
- 生活能力や職業能力を育むための生活訓練室や日常生活用具、作業室等の確保
- 漢字の読みなどに対する補完的な対応
5.肢体不自由
- 医療的ケアが必要な児童生徒がいる場合の部屋や設備の確保
- 医療的支援体制(医療機関との連携、指導医、看護師の配置等)の整備
- 車いす・ストレッチャー等を使用できる施設設備の確保
- 障害の状態に応じた給食の提供
6.病弱・身体虚弱
- 個別学習や情緒安定のための小部屋等の確保
- 車いす・ストレッチャー等を使用できる施設設備の確保
- 入院、定期受診等により授業に参加できなかった期間の学習内容の補完
- 学校で医療的ケアを必要とする子どものための看護師の配置
- 障害の状態に応じた給食の提供
7.言語障害
- スピーチについての配慮(構音障害等により発音が不明瞭な場合)
8.情緒障害
- 個別学習や情緒安定のための小部屋等の確保
- 対人関係の状態に対する配慮(選択性かん黙や自信喪失などにより人前では話せない場合など)
9.LD、ADHD、自閉症等の発達障害
- 個別指導のためのコンピュータ、デジタル教材、小部屋等の確保
- クールダウンするための小部屋等の確保
- 口頭による指導だけでなく、板書、メモ等による情報掲示
第5回公認心理師試験に出題
20 歳の男性 A、大学工学部の 2 年生。A からの申出はないが、A の家族 B より、実験のあった日の A の疲労が激しいため、サポーターをつけてほしいと、学生相談室のカウンセラー C に相談があり、C は A 及び B と 3 者面談を行った。A は、小学校高学年時に児童精神科を受診し、発達障害の診断を受けた。以後、高校までは、授業中の課題や宿題について代替措置を講じてもらうなどの配慮を受けてきた。大学で は、実験の際、指示の理解に時間がかかり、また手先が不器用で器具の扱いがスムーズにできないことで、教員にしばしば注意されている。授業時間が終わっても、居残りで実験をすることが多い。 合理的配慮について、C の B への対応として、最も適切なものを 1 つ選べ。
- 支援方法は A と C の合意によって決められると説明する。
- A の精神障害者保健福祉手帳の取得が必須であると説明する。
- 合理的配慮を受けるには心理検査の結果が必要であることを説明する。
- A が、授業を担当する教員に配慮内容について直接交渉する必要があると説明する。
- C は、A の意思を尊重しながら大学の学生支援の担当者に伝え、支援を依頼できると説明する。
大学における合理的配慮について、最も適切なものを 1 つ選べ。
- 発達障害のある学生が試験時間の延長を申し出た場合には、理由を問わず延長する。
- 弱視のある学生による試験時の文字拡大器具の使用を許可することは、合理的配慮に含まれる。
- 大学において何らかの支援を受けている発達障害のある学生は、我が国の大学生総数の約 6 % である。
- 大学においてピアサポーター学生が、視覚障害のある学生の授業付き添いをする場合、謝金支払いは一般的に禁止されている。
第4回公認心理師試験に出題
合理的配慮について、適切なものを1つ選べ。
- 公平性の観点から、入学試験は合理的配慮の適用外である。
- 合理的配慮の対象は、障害者手帳を持っている人に限られる。
- 合理的配慮によって取り除かれるべき社会的障壁には、障害者に対する偏見も含まれる。
- 発達障害児がクールダウンするために部屋を確保することは、合理的配慮に含まれない。
第2回公認心理師試験に出題
大学における合理的配慮について、最も適切なものを1つ選べ。
- 合理的配慮の妥当性の検討には、医師の診断書が必須である。
- 合理的配慮の内容は、授業担当者の個人の判断に任されている。
- 合理的配慮は学生の保護者又は保証人の申出によって検討される。
- 合理的配慮の決定手続は学内規定に沿って組織的に行うべきである。
- 意思決定が困難な学生への合理的配慮は、意思確認を行わず配慮する側の責任で行う。
第1回公認心理師試験(追加試験)に出題
障害のある児童生徒への合理的配慮に該当する例として、最も適切なものを1つ選べ。
- 特別支援学校(視覚障害)の授業で点字を用いる。
- 特別支援教室において個別の取り出し指導を行う。
- 肢体不自由の児童生徒のために学校にエレベーターを設置する。
- 特別支援学校(聴覚障害)の授業で音声言語とともに手話も使う。
- 試験の際、書字障害の児童生徒にパーソナルコンピューターでの答案作成を許可する。
第1回公認心理師試験に出題
障害者の雇用の促進等に関する法律について、誤っているものを1つ選べ。
- 障害者の法定雇用率の算定基礎の対象には、精神障害者が含まれている。
- 募集、採用、賃金、教育訓練及び複利厚生施設の利用について障害者であることを理由とする差別が禁止されている。
- 事業主は採用試験の合理的配慮として、例えば視覚障害者に対して点字や音声などで障害の特性に応じた必要な措置を行う。
- 障害者のみを対象とする求人など、積極的な差別是正措置として障害者を有利に扱うことは、禁止される差別に該当する。
- 事業主が必要な注意を払っても被雇用者が障害者であることを知り得なかった場合には、合理的配慮の提供義務違反を問われない。
スポンサードリンク