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問61 事例
10歳の女児A、小学4年生。小学校への行きしぶりがあり、母親に伴われて教育相談室に来室した。母親によると、Aは学習にも意欲的で、友達ともよく遊んでいる。母親をよく手伝い、食前に食器を並べることは必ず行うので感心している。幼児期は泣くことも要求も少ない、手のかからない子どもだった。Aに聞くと、音読が苦手であり、予習はするが授業中うまく音読ができず、緊張して瞬きが多くなり、最近では家でも頻繁に瞬きをしてしまうという。また「友達には合わせているが、本当は話題が合わない」と話す。
Aの見立てと対応として、最も適切なものを1つ選べ。
- チック症状がみられるため、専門医への受診を勧める。
- うつ状態が考えられるため、ゆっくり休ませるよう指導する。
- 発達障害の重複が考えられるため、多面的なアセスメントを行う。
- 発達障害が考えられるため、ソーシャルスキルトレーニング〈SST〉を行う。
- 限局性学習症/限局性学習障害〈SLD〉が考えられるため、適切な学習方法を見つける。
母親の困り感は行きしぶり。しかし、学習には意欲的で、友達ともよく遊ぶ。手伝いもよくする。
Aの困り感は、音読が苦手、そこからの瞬き、友達と合わない。
母親が捉えているA像と、本人の訴えに差がある。現在得られている情報も限られている。現段階で、何か具体的な提案をできるような段階ではなく、更なる情報収集、多面的アセスメントが必要である。
問62 事例
35歳の女性、会社員。ストレスがたまり気分が沈むため、産業医から企業内の心理相談室に紹介された。元来責任感の強いタイプで、融通が利かないと言われることもあった。2年前に離婚した。発達障害と診断された小学校1年生の娘が一人おり、最近は娘が問題を起こして先生になんども呼び出されるという。仕事はこなせているが、離婚したことや、子どもの問題を考えると気分が沈む。余暇の楽しみはなく、休日はぐったりしていることが多い。食欲はあまりなく食事を楽しめない。原家族は遠方に住んでおり、育児や経済面への援助はない。
現時点で最も適切な対応を1つ選べ。
- 病気休暇を取得することを勧める。
- 非構造化面接や簡単な心理検査を行う。
- 速やかに認知行動療法による介入を行う。
- 原家族や娘の小学校に連絡して情報を得る。
- 生命が危険な状態にあるため危機介入を行う。
病気休暇、速やかな認知行動療法による介入、危機介入に至るほどの情報はまだないと言える。また、原家族や娘の小学校に連絡するためには、本人の同意が必要である。
非構造化面接や簡単な心理検査により、本人をアセスメントしていく必要がある。
問63 事例
13歳の男子A、中学生。中学校のスクールカウンセラーから紹介されてB大学の心理相談室を訪れた。スクールカウンセラーからの依頼状では、クラスでの対人関係の困難と学習面での問題について対処するために心理検査を実施してほしいという内容であった。ところが、Aは検査のために来たつもりはなく、「勉強が難しすぎる」、「クラスメイトが仲間に入れてくれない」、「秘密にしてくれるなら話したいことがある」と語った。
援助を開始するに当たって、インフォームド・コンセントの観点から最も適切な方針を1つ選べ。
- 保護者からの合意を得た上で適切な心理検査を実施する。
- いじめが疑われるため、Aには伝えず保護者や教員と連携をとる。
- 「ここでのお話は絶対に他の人には話さない」と伝えて話を聴いていく。
- スクールカウンセラーから依頼された検査が問題解決に役立つだろうと伝えた上で、まずはAが話したいことを聴いていく。
- スクールカウンセラーから依頼された検査をするか、自分が話したいことを相談するか、どちらがいいかAに選んでもらう。
インフォームド・コンセントを参照。
インフォームド・コンセント(informed consent)は知識のある上での合意を指す。特に医療行為において、患者がその家族が治療についての知識や方針について十分理解し、かつ医療者側も、患者や家族の意向を十分に把握した上で、皆で合意を得るプロセスのことをいう。
この場面は大学の心理相談室であるため、医療行為ではないが、基本的な考え方は同じ。Aの合意は基本的に必要であり、その合意を得るためには、検査がどのようなもので、何に役立つのかを説明する必要がある。
・スクールカウンセラーからの依頼状では、クラスでの対人関係の困難と学習面での問題
・本人は、「勉強が難しすぎる」、「クラスメイトが仲間に入れてくれない」、「秘密にしてくれるなら話したいことがある」と語る。
どちらの意見も本人の支援を行う上で重要であるため、両方の意見が反映され、かつインフォームド・コンセントがなされている回答は、④のみである。
問64 事例
55歳の男性A、自営業。Aは糖尿病の治療を受けていたが、その状態は増悪していた。生活習慣の改善を見直すことを目的に、主治医から公認心理師に紹介された。Aは小売店を経営しており、取引先の仲間と集まってお酒を飲むのが長年の日課となっていた。糖尿病が増悪してから、主治医には暴飲暴食を辞めるように言われていたが、「付き合いは仕事の一部、これだけが生きる楽しみ」と冗談交じりに話した。Aは「やめようと思えばいつでもやめられる」と言っている。しかし、翌週に面接した際、生活習慣の改善は見られなかった。
まず行うべき対応として、最も適切なものを1つ選べ。
- 家族や仲間の協力を得る。
- 飲酒に関する心理教育を行う。
- 断酒を目的としたグループを紹介する。
- Aが自分の問題を認識するための面接を行う。
- Aと一緒に生活を改善するための計画を立てる。
「付き合いは仕事の一部、これだけが生きる楽しみ」「やめようと思えばいつでもやめられる」という発言から、Aは糖尿病が悪化しているにも関わらず、自分の問題を軽視していることが考えられる。治療動機がないと、他の選択肢を取り組むことは難しいため、Aの動機を高める動機づけ面接を行う必要がある。
動機づけ面接法を参照。
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問65 事例
50歳の男性。5年前に筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉と診断された。誤嚥性肺炎の既往がある。1年前に嚥下困難となり胃瘻(いろう)造設術を受け、現在は配偶者の介護により在宅で療養している。四肢の筋萎縮と球麻痺があり、寝たきりで発声は不可能な状態である。在宅医療チームの一員として心理的支援を依頼された。
この患者の支援にあたって、念頭におくべき症状として、最も適切なものを1つ選べ。
- 褥瘡
- 認知症
- 感覚障害
- 呼吸筋障害
- 眼球運動障害
ALSにあらわれやすい症状
- 手足の麻痺による運動障害
- コミュニケーション障害
- 嚥下障害
- 呼吸障害
ALSにあらわれにくい症状
- 眼球運動障害
- 膀胱直腸障害
- 感覚障害
- 床ずれ(褥瘡)
②と④が正答の対象であるが、発症して5年経過しているため、呼吸筋が弱まっている可能性は十分に考えられる。しかし、50歳という年齢から認知症の可能性は高いとは言えない。
問66 事例
55歳の男性。肺癌の終末期で緩和ケアを受けている。家族に寄れば、最近苛立ち安く、性格が変わったという。夜間はあまり眠らず、昼間に眠っていることが多い。
この患者の状態を評価する項目として、最も優先すべきものを1つ選べ。
- 幻覚
- 不安
- 意欲低下
- 見当識障害
- 抑うつ気分
①と③については、それらに関連する記述がないため、除外。不安は、終末期の患者の根底に付きまとっている感情であり、この患者の状態を評価する項目として、最も優先すべきかは疑問である。
キューブラー・ロスの死の受容のプロセスでは
- 否認
- 怒り
- 取引
- 抑うつ
- 受容
という流れを辿ると考えられており、この中に「抑うつ」は含まれる。抑うつの症状としては、怒りや昼夜逆転が含まれているため、⑤の抑うつ気分が適切であるようには思うが、公式解答では正答は④。
せん妄による見当識障害などは考えられる。
問67 事例
28歳の男性A、無職。Aは中学校時代にいじめに遭い遅刻や欠席が増え、高校2年性のときに不登校となった。それ以来、自宅にひきこもり、アルバイトを試みた時期もあったが、最近はほとんど外出しない。普段はおとなしいが、家族がA自身の今後のことを話題にすると急に不機嫌になり、自分の部屋にこもってしまう。対応に苦慮した母親が精神保健福祉センターに来所した。
Aと家族に対するセンターの初期の対応として、最も適切なものを1つ選べ。
- 訪問支援を行う。
- Aが同意した後に母親の相談に応じる。
- Aの精神医学的評価に基づいて支援を検討する。
- Aに対する家族の対応に誤りがないかどうかを話し合う。
- 即効性のある対処法を母親に教えて相談を継続する動機を高める。
ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン(厚生労働省)を基本に解答。
3-2 適切な評価が行われるための環境
適切な評価が行われるためには、2つの要素が重要です。一つは、ひきこもりは相談初期に得られた情報だけでは効果的な支援ができず、長期的な関与を続けながら情報を蓄積する事が必要であるという事です。もう一つは、適切な支援を計画するために精神障害の有無についての判断が非常に重要であるという事です。
3-5 家族しか相談に訪れない場合の精神障害の評価についての考え方
精神障害の評価を正確に行うためには、医療の専門家が当事者の日常生活・精神状態・ 親との関係性・症状など、多方面から評価し総合的な見立てを行う必要があります。当事者と直接会えない状況で、家族が述べる情報を元に評価する際には、情報があくまで家族の目を通した間接的で限定的なものであることを常に意識し、得た評価結果についてもあくまで推測の結果に過ぎないとする慎重さが求められます。
本人に会えない状況ではあるが、精神障害の有無、評価は重要であることが読み取れる。ゆえに①、④については早計と考えられる。⑤は「即効性」という言葉だけでも不正解と捉えることが大事。
②については、
「4-3-a-ii 家族のみの相談の場合それを当事者に伝えることの是非」に記載。
ケース・バイ・ケースですが、可能なら相談を始めることを事前に知らせるべきでしょ う。しかし、家族がその決意をできない時に無理強いすべきではありません。家族への暴力や支配が激しい場合は、相談へ行ったことを知るとさらなる暴力の悪化を招くこともあ ります。そのような場合は、知らせずに時期を待つことも大切でしょう。
問68 事例
12歳の男子A、小学校6年生。Aは授業中ぼんやりしていることが多く、学習に対して意欲的な様子を見せない。指示をしない限り板書をノートに写すことはせず、学習全般に対して受動的である。常に学習内容の理解は不十分で、テストの点数も低い。一方、教師に対して反抗的な態度を示すことはなく、授業中に落ち着かなかったり立ち歩いたりという不適切な行動は見られない。クラスメイトとの人間関係にも問題があるとは思えず、休み時間などは楽しそうに過ごしている。知能指数は標準的で、言葉の遅れもなく、コミュニケーションにも支障はない。また、読み書きや計算の能力にも問題はない。
Aの状態として最も適切なものを1つ選べ。
- 学業不振
- 学習障害
- 発達障害
- 学級不適応
- モラトリアム
②については、「知能指数は標準的で、言葉の遅れもなく、コミュニケーションにも支障はない。また、読み書きや計算の能力にも問題はない。」という表記で否定。
③については、「授業中に落ち着かなかったり立ち歩いたりという不適切な行動は見られない。」「コミュニケーションにも支障はない」という表記で否定。
④については、「クラスメイトとの人間関係にも問題があるとは思えず、休み時間などは楽しそうに過ごしている。」から否定。
⑤については、12歳という年齢だけでも(18歳〜22歳程度)否定。
問69 事例
40歳の男性A、小学校教師。Aは「授業がうまくできないし、クラスの生徒たちとコミュニケーションが取れない。保護者からもクレームを受けている。そのため、最近は食欲もなくよく眠れていない。疲れが取れず、やる気が出ない」とスクールカウンセラーに相談した。
スクールカウンセラーの対応として、まず行うべきものを1つ選べ。
- 医療機関への受診を勧める。
- 管理職と相談し、Aの業務の調整をする。
- Aの個人的な問題に対して定期的に面談する。
- Aから授業の状況や身体症状について詳しく聴く。
- Aの代わりに、保護者からのクレームに対応する。
まずは、Aや学級の状態について詳しく聞いてから、Aと一緒に対策を検討する。①、②については、その結果、対応としては考えられるものではあるが、まだ情報として十分ではない。
③については、業務上の問題ではなく、「個人的」な問題に対して、スクールカウンセラーが定期的に面談することは、慎重になる必要がある。
⑤は、担任の業務であり、基本的にスクールカウンセラーが行うべきではない。
まず行うものとしては、④が妥当。
問70 事例
42歳の女性A。Aは中学2年生の息子Bの不登校について相談するために、スクールカウンセラーを訪ねた。中学1年生のときの欠席は年1日程度で部活動もしていたが、中学2年生の5月の連休過ぎから休みがちとなり、1か月以上欠席が続いている。Bは休みがちになってから家での会話も少なく、部屋にこもりがちで表情は乏しいが、食事や睡眠はとれている様子である。学校に行けない理由をAがBに聞くと、うるさがり言い争いになる。担任教師がBに電話を掛けてきても出ようとせず、Aは「どう対応していいか全くわかりません」と話した。
スクールカウンセラーの対応として、まず行うべきものを1つ選べ。
- 教育支援センターの利用を強く勧める。
- 「お宅に伺ってB君と話してみましょう」と提案する。
- Aの苦労をねぎらった上で、Bの現在の様子の詳しく聴く。
- Aのこれまでの子育てに問題があるのではないかと指摘し、Aに改善策を考えさせる。
- 「思春期にはよくあることですから、そのうちに学校に行くようになりますよ」と励ます。
基本的には、問69と同じように考える。Aの苦労をねぎらった上で、Bの現在の様子の詳しく聴くことから、支援計画を立てる。①と②については、それからの対応策。
④は、少なくとも、ラポールが形成されていない段階で指摘するような内容ではない。
⑤は、AとBの状況を考慮しているとは言えず、根拠もなく適切とは言えない。
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