第1回公認心理師試験過去問題141〜150

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問141 事例

21歳の男性A、大学生。Aは学生相談室に来室した。以前から緊張すると下痢をすることがあった。就職活動の時期になり、大学で面接の練習をしたときに強い腹痛と下痢を生じた。その後、同じ症状が起こるのではないかと心配になり、外出前に頻回にトイレに行くようになった。さらに、人混みでは腹痛が生じるのではないかと心配になり、電車やバスに乗ることも避けるようになった。消化器内科を受診したが、器質的な異常は認められなかった。

この時の学生相談室の公認心理師がAに対して最初に行う助言として、最も適切なものを1つ選べ。

  1. 腹痛がきになる状況や、その際の心身の変化などを記録する。
  2. 心身の安定を実現するために、筋弛緩法を毎日実施するようににする。
  3. 苦手な状況を避けているとますます苦手になるため、積極的に行動するようにする。
  4. 腹痛を気にすればするほど緊張が高まってしまうため、なるべく気にしないようにする。
  5. 下痢をしやすい間は安静にした方がよいため、しばらくは外出を控えるなど無理をしないようにする。
解答

過敏性腸症候群の可能性を考えて解答する。

過敏性腸症候群への対応としては、食生活や生活習慣の改善が必要になってくる。また、どのような状況下でストレスを感じやすく、自律神経に影響を及ぼしているかを把握することが必要と言われている。iPhoneで過敏性腸症候群(IBS)の自律神経活動を記録する「おなかナビ」というアプリも登場しているほど。腹痛がきになる状況や、その際の心身の変化などを記録することは、自身のストレスや生活習慣の乱れを客観的に捉えることで、行動変容のきっかけとなる。

問142 事例

32歳の女性A、会社員。Aは2ヶ月前に部署を異動した。1ヶ月ほど前から不安で苛立ち、仕事が手につかないと訴えて社内の健康管理室に来室した。最近疲れやすく体重が減少したという。面接時は落ち着かず手指が細かく震えている。

健康管理室でAの状態を評価するために、最初に考慮すべきものとして、最も適切なものを1つ選べ。

  1. 対人関係
  2. 仕事の能率
  3. 不安の対象
  4. 身体疾患の有無
  5. 抑うつ気分の有無
解答

不安、苛立ち、仕事が手につかない、体重減少からうつ病の可能性を考えて解答。

対人関係や仕事の能率、不安の対象、抑うつ気分を知ることは後々重要になってくるが、手指の震えもあったため、まずは身体疾患からくる精神疾患ではないかを確認するためにも、既存の身体疾患についての有無について考慮する必要がある。

問143 事例

5歳の男児。父母からの身体的虐待とネグレクトを理由に、1週間前に児童養護施設に入所した。入所直後から誰彼構わず近寄り、関わりを求めるが、関わりを継続できない。警戒的で落ち着かず、他児からのささいなからかいに怒ると鎮めることが難しく、他児とのトラブルを繰り返している。着替え、歯磨き、洗面などの習慣が身についていない。眠りが浅く、夜驚がみられる。

このときの施設の公認心理師が最初に行う支援として、最も適切なものを1つ選べ。

  1. 眠りが浅いため、医師に薬の処方を依頼する。
  2. 心的外傷を抱えているため、治療として曝露療法を開始する。
  3. 気持ちを自由に表現できるよう、プレイルームでプレイセラピーを開始する。
  4. 趣味や嗜好を取り入れて、安心して暮らせる生活環境を施設の養育者と一緒に整える。
  5. 年齢相応の基本的な生活習慣が身につくよう、施設の養育者と一緒にソーシャルスキルトレーニング〈SST〉を開始する。
解答

どの選択肢も、方法だけ見ればおかしい点は少ないが、今回は「最初に行う支援」となっているため、④が妥当だと思われる。関わりを強く求める、警戒心が強いなどからも、身体的虐待やネグレクトの環境で育ったために、基本的な安心感を得ることが優先される。

問144 事例

9歳の男児A、小学3年生。Aは学校で落ち着きがなく、授業に集中できずに離席も多いため、担任教師に勧められて、母親が家の近くにある市の相談センターに連れて来た。母子家庭できょうだいはない。3回目の面談には、Aが一人で来所した。Aの顔が赤く腫れ上がっており、公認心理師Bが尋ねると、「昨日家でおじさんに殴られた。怖いから家に帰りたくない」と怯えた表情で訴えた。Bが「おじさんって?」と尋ねると、「一緒に住んでいる人」と答えた。よく見ると別の場所や手足に古いあざのようなものが多数あった。

Bの取るべき行動として、最も適切なものを1つ選べ。

  1. 相談センターの責任者に伝え、センターから市の虐待対応部署に通告する。
  2. 家に帰すことは危険と考え、AをBの家に連れて帰り、母親に連絡を取る。
  3. 事実の確認が必要と考え、司法面接の技術を用いて、自ら詳細な聞き取りを行う。
  4. 怖い気持ちを十分に受け止めた上で、家に帰るように諭して帰宅させ、次回にその後の様子を聞く。
  5. 母親に連絡をしてAが怯えていることを伝え、母親に「おじさん」の暴力を止めてもらうよう依頼する。
解答

児童虐待の防止等に関する法律第6条(児童虐待に係る通告)
児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

問145 事例

中学生A〜Eが学習している。Aは社会科に興味があり自ら進んで学習するが、テストのために勉強することが嫌いである。Bはテストで良い点を取るために勉強するが、学習内容には関心がない。Cは何事に対しても優れた成果を出すために努力し、学習に取り組む時間が長い。Dは親や教師に叱られることを避けるために勉強することが多く、学習が楽しいと思ったことはない。Eには勉強しないと不安になる傾向があり、学習時間が長い。

内発的動機づけによる学習をしている者として、正しいものを1つ選べ。

  1. A
  2. B
  3. C
  4. D
  5. E
解答

内発的動機づけとは、興味や関心などから引き起こされる動機づけのこと。

問146 事例

9歳の男児A、小学3年生。Aの学級はクラス替えがあり担任教師も替わった。5月になるとAが授業中に立ち歩くようになり、それを注意する児童と小競り合いが頻発するようになった。クラス全体に私語がみられ、教室内で勝手な行動をして授業に集中できていない児童も多くなってきた。やがて、担任教師の指導に従わず授業が成立しないなど、集団教育という学校の機能が成立しない状態になってきた。担任教師によるこれまでの方法では問題解決ができない状態に至っていると管理職は判断している。

このときの学校の取組として、最も適切なものを1つ選べ。

  1. 担任教師を交代させる。
  2. 児童の力を信頼し、時間をかけて改善を待つ。
  3. チームティーチングなどの協力的指導体制を導入する。
  4. 校長のリードにより、学校独自の方策で解決に取り組む。
  5. Aの保護者に対し、家庭で厳しくしつけるよう依頼する。
解答

いわゆる学級崩壊への対応についての問題。学級崩壊は、一人の子どもの影響だけで起こるものではなく、そこには集団力動等、様々な要因が含まれている。担任教師を交代させたり、中心となっている子どもを指導するだけでは、改善することは難しい。

基本的には、担任を中心に、複数の教職員や保護者等が連携しながら、協力的指導体制をとることが重要となってくる。

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問147 事例

11歳の女児A、小学5年生。Aは複数のクラスメイトから悪口やからかいなどを頻繁に受けていた。ある日、スクールカウンセラーBは、Aから「今のクラスにいるのがつらい」と相談を受けたが、「誰にも言わないでほしい」と強く頼まれた。

Bの対応として、最も適切なものを1つ選べ。

  1. 職員会議で全教職員に詳細に報告する。
  2. Aとの関係を重視して、Bのみで対応を継続する。
  3. Aの同意が得られるまで、管理職(校長など)への報告を控える。
  4. 学級内で起きていることであり、担任教師に伝え対応を一任する。
  5. Aの心情も含めて、校内のいじめ対策のための委員会に報告する。
解答

いじめ防止対策推進法をもとに解答。

第二十三条 学校の教職員、地方公共団体の職員その他の児童等からの相談に応じる者及び児童等の保護者は、児童等からいじめに係る相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、いじめを受けたと思われる児童等が在籍する学校への通報その他の適切な措置をとるものとする
2 学校は、前項の規定による通報を受けたときその他当該学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは、速やかに、当該児童等に係るいじめの事実の有無の確認を行うための措置を講ずるとともに、その結果を当該学校の設置者に報告するものとする。
3 学校は、前項の規定による事実の確認によりいじめがあったことが確認された場合には、いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、当該学校の複数の教職員によって、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行うものとする。

いじめに係る相談を受けた場合は、学校へ通報する必要がある。しかし、本人が「誰にも言わないでほしい」と述べていることから、その相談内容に関しては、慎重に取り扱わなければならない。よって、⑤が妥当だと思われる。

問148 事例

40歳の女性。Aには二人の息子がいたが、Aの長男が交通事故に巻き込まれ急死した。事故から半年が経過しても、涙が出て何も手につかない状態が続いている。Aの状態を案じた夫に連れられてカウンセリングルームに来室した。カウンセリングの中で、Aは「加害者を苦しめ続けてやる。自分はこんなに悲しみに暮れている。息子が亡くなったのに平気な顔で生活している夫の神経が信じられない」などと繰り返し語っている。

このときのAへの支援の在り方として、最も適切なものを1つ選べ。

  1. 加害者を苦しめ続けたいというAの気持ちを否定しない。
  2. Aの安心を優先させるため「私はあなたを全部理解できる」と言う。
  3. Aの話が堂々巡りになっているため、将来のことに話題を変える。
  4. カウンセリングで良くなった担当事例を紹介して、Aを勇気づける。
  5. Aの考えに同調し「確かにご主人の神経は信じられませんね」と言う。
解答

グリーフケアに関する問題。グリーフケアとは、死別などによる深い悲しみから立ち直れるように側で支援をすること。死を受け入れる葛藤の過程に寄り添い、相手の感情や行動を認め、話を聴く姿勢が重要とされる。

問149 事例

45歳の男性A、工場勤務。Aは酒好きで、毎日焼酎を4〜5合飲んでいた。この数年、健康診断で肝機能の異常が認められ、飲酒量を減らすよう指導を受けていた。半年前から欠勤が目立ち始め、酒の臭いをさせて出勤し、仕事のミスも目立ち始めた。産業医は「完全に飲酒をやめることが必要。できなければ専門病院での入院治療も必要」とAに指導した。Aは今後一切飲酒しないと約束した。1か月後、上司から産業保健スタッフの一員である公認心理師に連絡が入り「Aが1週間ほど無断で休んでいる。電話をすると、つい酒を飲んでしまったということだった」と言う。

関係者(上司、人事労務担当者、産業保健スタッフ、家族など)の対応として、不適切なものを1つ選べ。

  1. 関係者が集まり、全員でAに問題を認識させる。
  2. 治療を受ける意向がある場合は合意事項を確認し、Aと約束する。
  3. 「絶対自分でやめる」と主張する場合は、Aの意思を尊重して様子を見る。
  4. 治療しなければ降格や失職の可能性も考えなければならないことをAに伝える。
  5. 専門医療の必要性と入院を含む治療方針について、関係者間で事前に協議しておく。
解答

アルコール依存症に関する問題。

  1. 治療動機を持たせるためにも、関係者全員が集まり、Aに問題を認識させることは必要である。
  2. 治療者の一方的な治療計画では、本人の納得を得たものとならないため、合意事項を確認し、本因の意思を確認することは必要である。
  3. アルコール依存症は、本人の意思だけで治療できるものではないため、「絶対自分でやめる」という言葉を尊重することは、症状を悪化させることにもつながりかねない。
  4. 今後起こりうる懸念事項について、本人に伝えることは、酒害教育としても重要である。
  5. 関係者間での連携は必要である。

問150 事例

Muller-Lyer錯視の図形に関して、矢羽根(斜線)の角度が錯視量にどのように影響を与えるのかを調べるために実験を行うことになった。矢羽根が内側に向いた内向図形を標準刺激、矢羽根が外側を向いた外向図形を比較刺激とし、この2つの刺激を接するように横に並べて呈示する。標準刺激の主線(水平線分)の長さは90mm、比較刺激の主線の長さは可変、標準刺激も比較刺激も矢羽根の長さは30mm、矢羽根の角度は15°、30°、45°、60°とした。実験参加者は標準刺激の主線の長さと主観的に同じ長さになるように、比較刺激の長さを調整する。

この実験を行う方法として、正しいものを1つ選べ。

  1. 標準刺激の位置を左に固定する。
  2. 矢羽根の角度が異なる刺激をランダムに呈示する。
  3. 主線の太さを矢羽根の角度によってランダムに変化させる。
  4. 図形の背景の色を矢羽根の角度によってランダムに変化させる。
解答

この実験は、矢羽根の角度を15°、30°、45°、60°と変えた時に、標準刺激と比較刺激の主線の長さが主観的にどう変化するか(どの程度錯視が起こるか)というものである。変化するのは、「矢羽根の角度」と実験参加者が調整できる「比較刺激の主線の長さ」の2つである。

そこに、「主線の太さ」や「背景の色」という変化を加えてしまうと、どの刺激が結果に影響しているのかがわからなくなるため、③と④は除外。また、標準刺激を左側に固定してしまうと、先に提示されたものと比較しやすくなり、結果に影響が出ることが想定されつため除外。

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